「当然、共謀罪を取り締まるためには盗聴が不可欠です。共謀罪の法案が通れば、適用される600から700の犯罪について、すべて盗聴できるようにするため法改正することは間違いないと思います。さらに、今回の通信傍受法改正案には入りませんでしたが、室内盗聴という部屋のなかの会話の盗聴も必要になる。これは会話傍受とも呼ばれます。さらに、街角の防犯カメラも比較的新しいものは、人の声も捕捉することができると言われています。したがって、公園等で会話しているものもすべて記録されてしまうことも考えられる。こうしたかたちで監視が強化されると、そのなかで、共謀にあたる可能性がある、ということで摘発される例がでてくると思います」
さらに、こうした共謀罪、盗聴に関わる情報は、もちろん捜査当局の情報として扱われるが、これに関係するのが昨年12月に施行された秘密保護法だ。防衛、外交、特定有害活動(すなわちスパイ)、テロリズムの4つを「特定秘密」として、これらに関する情報を漏らした公務員に最高懲役10年の罰則を設けた秘密保護法だが、条文が非常に曖昧で、政府により「特定秘密」が恣意的に指定されうると多くの法律専門家が指摘している。さらに市民側も「特定秘密」の取得を「共謀」すると最高5年の懲役が科せられると明記されており、これもまた解釈を拡大して、摘発が濫用される恐れがある。
共謀罪、盗聴法、秘密保護法を接続し、俯瞰するとどうなるか。ひっきょう、市民は言論の自由、プライバシーの権利、知る権利の3つを、がっちりと政府に押さえ込まれてしまうことになる。加えて山下弁護士が警鐘を鳴らすのは、来年1月から開始されるマイナンバー制度の存在。これが全体像を捉える補助線となる。
「さらに言えば、マイナンバー制度が来年から動き出しますが、これも実は、国民のさまざまな情報、特に経済的なお金の流れなどを捕捉することができますし、将来的には銀行のお金の流れも把握できるようになります。一応、第三者機関が不適切な運用がないかチェックするとされていますが、警察の捜査に関する場合は、その対象外です。つまり、警察がマイナンバーを捜査に利用することが想定されているわけですね。警察がお金の流れを把握して、これを犯罪の資金として集めていると見なせば、そこには共謀があるはずだと考える」