数の暴力を行使した強行採決により紛糾する参院特別委員会(YouTube「ANNnewsCH」より)
安保法案は参院特別委員会で抜き打ちのような強行採決を行われ、本会議に移ってしまった。現在、野党が問責決議案、不信任決議案を連発して必死の抵抗を見せている。
しかし、うんざりさせられるのが、こうした野党の行動に対して、「子供っぽい抵抗」「パフォーマンスでしかない」「なんの意味もない」「民主的な議事運営の否定」などといったしたり顔の批判が相次いでいることだ。
さらには、1992年のPKO協力法案をめぐって行われた「牛歩」をもちだし、「国民から大ひんしゅくを買った」「あの愚行を繰り返してはならない」などと、先回りする形で野党を牽制するような意見まで噴出している。
まったくバカも休み休み言ってほしい。先日の記事でも指摘したように、牛歩も含むフィリバスター(議事妨害)は、民主主義で認められた当然の権利であり、少数野党が政権の暴走を食い止めるための唯一最大の武器だ。欧米では、『スミス都へ行く』(監督/フランク・キャプラ)というフィリバスターをテーマにした映画が作られるなど、信念をもつ“抵抗のかたち”として高い評価を得ている。
しかも、今回はまさにこれを行使する大きな理由がある。自民党は、民主主義のルールを無視するものなどともっともらしいことをいっているが、そもそも民主主義を無視して、数の論理で無茶苦茶な議事運営をしているのは安倍政権=自民党のほうなのだ。
デタラメな答弁を繰り返し、説明を二転三転させ、国民の大多数が明らかに今国会での法案成立に反対しているのに、とにかく強引に採決にもっていくことしか考えていない。
昨日の特別委員会でも、NHKなどの御用メディアはまるで野党がいちゃもんをつけているかのように報道していたが、実際は自民党のほうがルール無視のだまし討ちを連発していた。約束を破って突然、委員会室で理事会を開催し、野党にそれを抗議されると理事会をすっとばして委員会を再開。鴻池祥肇委員長の不信任決議が出されると、そんな権限はないのに佐藤正久議員への委員長委嘱を宣言する。そして、採決では、いきなり与党議員が委員長を取り囲んで、総括質疑のないまま、賛成の起立の声も怒号でかき消されているのに、勝手に「賛成多数で可決」を宣言してしまったのである。