さらに石田は、先の戦争でどれだけの人びとが尊い命を落としてきたかを話しはじめた。310万人、一説には400万人もの人びとが犠牲になったこと。ポツダム宣言を受け入れるまでの間に、何十万人という一般の人びとが空襲の犠牲になったこと──。
「インパール作戦では20万人も日本兵がアジアに出て行って、帰ってきたのは2万人です。18万人が、餓えと、病気と、そして戦争で弾丸でも亡くなっている」
そう言うと、力を込めてこう宣言した。
「戦争は文化ではありません!」
その昔、1996年に石田は「文化や芸術といったものが不倫から生まれることもある」と発言、世間から大バッシングを受け、その後は「不倫は文化です」というフレーズが石田の代名詞となった。それを踏まえた「戦争は文化ではありません!」宣言だったのかもしれないが、その言葉にデモ参加者からは大きな拍手が巻き起こった。
モテ男として長く君臨してきたせいか軟派に見える石田だが、意外にも政治に興味があり、「不倫は文化」発言がきっかけで降板したものの、一時期はニュース番組のキャスターを務めたこともある。
それに、今回の安保法制に対しては、関西のテレビ番組で公然と批判を行っている。関西では長寿番組であり、石田が水曜コメンテーターを務める『おはよう朝日です』(ABC朝日放送)では、「憲法9条があるから日本は戦争してこなかった」とし、「それを変える必要があるのか」と疑問を呈した。さらに、きょうのスピーチでも言及した集団的自衛権も“戦争するための準備ができるということ”などと発言している。
これまでも本サイトで紹介してきたように、笑福亭鶴瓶やSHELLY、高田延彦などといった芸能人たちも安保法制には反対の立場を取ってきたが、それはTwitterでの投稿だったり、高視聴率はあまり見込めないドキュメンタリー番組などでのこと。だが石田は、関西ローカルとはいえお茶の間に定着した人気番組ではっきりと批判を言い、そして今晩は反対デモに参加してスピーチまで行ったのだ。「芸能人は政治的主張を慎むべし」という不文律があるなかで、これは相当に勇気がいる行動だ。