『葬儀屋と納棺師が語る不謹慎な話』(竹書房)
映画『おくりびと』や檀蜜のおかげで、以前よりメジャーになった感のある葬儀屋・納棺師の仕事だが、やはりまだまだ知らないことがたくさんあるようだ。
葬儀屋を経て漫画家となったおがたちえが納棺師・nontan氏の協力をもとに書いたコミックエッセイ『葬儀屋と納棺師が語る不謹慎な話』(竹書房)には知られざる葬儀屋・納棺師の裏側が描かれている。
まず気になるのは、一体どういう理由で、葬儀屋・納棺師になったのかということだ。同書では、「同僚に聞いた話」として、【1】実家が葬儀屋だったから、【2】身内の葬儀でスタッフの仕事に感動したから、【3】映画・ドラマを見て、【4】死体マニア、という4つの理由が挙げられている。それにしても恐ろしいのが、「死体マニア」だから葬儀屋になった、というケース。たしかに葬儀屋であれば、合法的に死体を扱うことができる。とはいえ、そんなおぞましい趣味を仕事にすることは倫理的にどうなの?という疑問が浮上するのも事実。ただ、仕事にしてくれたおかげで、妙な事件が起きずに済んでいるのかもしれないと考えれば、悪いことではないのかもしれないが……。
同書では、葬儀業界における悪徳業者の手口も描かれている。代表的なものが、料金の上乗せだ。人が一生の中で葬儀を行うのは、数回程度のこと。プロでない限り、その料金の相場を熟知していることはあまりないのだ。そんな“素人”を相手に、悪徳葬儀屋はありえない料金を請求しているわけだ。
葬儀では、「消耗品費」「宗教用具一式費」「会場使用費」などの名目で料金が請求される。それらの中で“上乗せ”が発生しやすいのが、「施行委託費」や「施行管理費」。これらは要するに「葬式の運営費」ということなので、明確な相場もなく、業者の“言い値”になりやすいというわけなのだ。
さらに「お花代はだいたい仕入れの倍で提供」「祭壇はもともと使い回しだから利益の出どころ」と、次々に上乗せがされてしまう模様。「だいたい100万円のプランで見積もっても最終的には倍にしちゃう」とのことで、葬儀の費用には気をつけたほうがいいかもしれない。
お金のことで言えば、「戒名」の相場もあまり知られていない。「戒名」にはランクがあり高くなるほど僧侶に払う金額も高くなる。たとえば、「〇○院」という戒名は100万円以上、「〇〇○○居士/大姉」なら60~80万円、「〇〇○○信士/信女」なら30~40万円、「故〈自分の名前〉之霊」だと20万円が相場とのこと。最近はパソコンのソフトで戒名を作っているお寺もあるとのことで、何十万円も払うほど有り難いものでもないような気もしてしまう。