こうした事態に政府もなりふり構わぬ“兵隊”リクルート作戦に出ている。
昨年7月1日、集団的自衛権が閣議決定された日以降、全国の高校生に自衛隊の採用説明会の案内が一斉に郵送され「赤紙が来た」などと大きな話題となったが、今年7月下旬から防衛省は高校・大学生に向けて「“マスメディアには出ない本当の自衛隊”を知る説明会」を大々的に開催する予定だ。
加えて“イメージ戦略”にも躍起になっている。昨年7月からAKB48の島崎遥香が自衛官募集のCMに出演し自衛隊オフィシャルマガジンの表紙を飾ったことは大きな話題となったが、今年の自衛官募集CMにはセクシータレントの壇蜜を登場させたのだ。壇蜜は「リクルート隊長」として自衛隊の意義や魅力をアピール、またネット動画では壇蜜が各自衛隊に入隊潜入し、訓練の模様など自衛隊員の生活を紹介している。
お堅い官庁の、特に自衛隊CMにセクシーを売りにしたタレントを登場させるのは異例でもあるが、それでホイホイ若者が自衛隊入りすると思ったら大きな間違いだ。実際、あまりに安易で若者をバカにしたような壇蜜CMに「色仕掛けで若者を戦場に送り込むな!」「壇蜜は護憲だったはずでは」などと批判が殺到したという。
おそらく、このテの表面的なPR作戦をやったところで、これからも、自衛隊志願者は減り続けるだろう。
そこで、安倍政権が着々と布石をうっているのが、先日、山本太郎も国会で追及していた経済的徴兵制度だ。安倍首相は安保法制を通すために、「徴兵制は憲法違反にあたるのでありえない」「集団的自衛権と徴兵制は関係がない」と打ち消しに躍起だが、その一方で、貧困層を狙って自衛隊に入隊させるという作戦をとり始めているのだ。
たとえば、前述した高校生への採用案内でも経済的メリットがやたら強調されていた。地域によって内容は異なるが、隊舎では家賃はもちろん、食費、光熱費、水道料金といった生活費がすべて無料であることや、入隊10年後の月収が自衛官候補生なら約34万円、一般幹部候補生なら約38万円になることといった宣伝文句が展開された。
また、安倍内閣で一二を争うタカ派閣僚文科相の諮問機関「学生への経済的支援の在り方に関する検討会」で、有識者メンバーの前原金一・経済同友会専務理事が奨学金の延滞者対策の必要性を主張したうえで、こう発言したのだ。
「前も提言したのですが、現業を持っている警察庁とか、消防庁とか、防衛省などに頼んで、1年とか2年のインターンシップをやってもらえば、就職というのはかなりよくなる。防衛省は、考えてもいいと言っています」
つまり、防衛省は奨学金延滞者のインターンシップを前向きに検討し始めているということらしい。