さきほど、彼女がメディアに出るたびに「東大法学部首席」であることが強調されると述べた。天性の優秀さをうかがわせる肩書きだが、これについて彼女は「私の執着心によって獲得できたタイトルでした」と明かす。
時は東大の入学式に遡る。山口は全国の高校で一番だった学生たちが一堂に会する様子を目の当たりにし、早くも「ここでまた次の闘いをしなくちゃいけない」のだと気付いたという。いくら東大生と言えど、大学に入れば勉強しなくなる学生は多い。そんな同級生を横目に、山口はせっせと講義に出席。一年生の夏学期、受け取った成績表のすべてが「優」だったのを見て、山口は「せっかくなので『優』を集めよう」と決意を固める。周囲にはトップを競い合うライバルもいたが、山口は彼女たちではなく自分が首席を獲得できるような「仕掛け」を準備することも怠らなかった。
〈(大学)四年間を終え、私が取得した単位は百六十二。そのすべてが優です。ただ、これは、私の想像ですが、優秀な上に努力家のN君(※ライバル)もおそらくオール優だったはずです。
では、なぜ私が総代に選ばれたかというと、取得単位数と優の数が多かったからです。実は、四年生の最後の学期が始まるとき、私はN君の取得単位数を数えました。おそらく私と同じでした。そこで、四年生の最後の学期で彼よりも取得単位数が多くなるように、一科目追加しました。この一科目のおかげで私は総代に選ばれました〉
山口はライバル達が「私より頭がいい」と認めながらも「しかし、私は、彼らに負けるとは思わなかった」と断じる。なぜなら、山口の場合には、「勉強ができる」というのは、「苦労に苦労を重ねて手にした自分のアイデンティティの核」であり、称号への執着において彼らとでは「切実さが全く違う」からだという。感心もする一方、その執着ぶりがやはり、外側からはどことなく怖く見えてしまうのだ。
山口本人の周到な計算によって勝ち取られた「東大首席」というブランドの、社会的なインパクトはたしかにすごい。ただしその威力ゆえ、対人関係においては敬遠される材料にもなりやすい。特に、生身の経験が物を言う恋愛というフィールドはそうだ。山口自身、恋愛は決して得意ではないという。というか、そもそも「誰かを好きになると、勉強に集中できなくなる」ため優先順位を低めに見積もっていたそうで「恋愛は勉強の敵」(!)とまで言い切ってしまうのだからすごい。