だが、少年は「明日、浅草で祭りがあるみたいなんだよ。祭り行きますから。撮影禁止なんて書いてませんからね。祭りは無礼講ですよ」などと話しただけで、ドローンを飛ばすとは一言も言っていない。
また、仮に少年がドローンを飛ばすと言っていたとしても犯罪にはならない。なぜなら、現行法ではドローンを飛ばすこと自体は違法ではないし、予告についても「ドローンを落とす」と言っていたら別だが、「飛ばす」と予告しただけでは威力業務妨害にはならないからだ。これが犯罪になるなら、「車で行く」と言うだけで「車で人を轢く」と言ったと同じだとして威力業務妨害が適用されてしまう。
しかも、予告動画を配信したものの、少年は祭りの当日(15日〜17日)は自宅にいたという。
いったいこれのどこをどう解釈したら「威力業務妨害」にあたるのか。今回の警視庁の逮捕は明らかに不当であり、公判維持はもちろん立件さえ難しいだろう。
実際、この逮捕には当の新聞、テレビの記者も驚きを隠せなかったと言う。
「第一報が飛び込んできたときは、記者クラブでもちょっと信じられない、という空気でしたね。見せしめといっても、容疑に無理があるし、15歳でしょう。手を焼いていたのは知ってましたが、予防拘束で十分対応できますからね。まさかここまでやるとは思わなかった」(警視庁記者クラブ担当記者)
新聞記者だけではない。たとえば、21日朝の『とくダネ!』。逮捕の一報が入ってきたとき、菊川怜は驚いたように「逮捕……?」とつぶやき、小倉も「何の罪状なのかな?っていうのが気になってたんですが。威力業務妨害……」と驚きの声をあげていた。これが、マスコミ関係者の本音だったはずだ。
ところが、警察が正式に逮捕を発表し、事態の詳細を把握したとたん、マスコミの態度は豹変。冒頭のような少年糾弾大会を開始したのだった。
もちろん、どの番組も不当逮捕に対する批判はほとんどなし。それどころか、警察を後押しするような専門家の解説まで垂れ流した。