しかし、ここで「どうして警察がAKBにそこまで気を遣う必要があるのか?」と疑問に思う人も多いだろう。だが、ジャニーズ事務所やバーニングプロダクションがそうであるように、大手芸能プロダクションと警察の癒着はいまに始まった話ではない。AKBでいえば、警察OBを「OJS48」として秋元康がプロデュースしたり、前田敦子をはじめとする人気メンバーたちが警察署で1日署長を務めるなど、その蜜月関係はAKBブレイク期からいまも続いているものだ。
運営の元幹部が強制わいせつ罪で逮捕されるという事件だけでなく、その元幹部が未成年者を含むAKBメンバーを盗撮し続けていたことが発覚すれば、AKB運営は社会的な責任追及を免れない。そうした事情のなか、AKBサイドが日頃昵懇にしている警察関係者を通じて、情報を握りつぶさせた──事の真相はこんなところだろう。そしていま、隠蔽したはずの情報を「文春」に暴かれ、AKB運営は慌てふためいているのだ。
実際、今回の盗撮問題について、スポーツ紙やテレビのワイドショー、その他の週刊誌は完全スルー状態。冒頭に書いたように、川栄の卒業や総選挙、チームの組閣などの話題で繋ぎ、盗撮問題そのものをなかったことにしようとしている。いつもなら「文春」が報じるメンバーたちのスキャンダルに怒りや擁護の声をあげるファンたちも、今回は盗撮されたメンバーを案じてなのか、それとも目を背けたいのか、沈黙に近い静けさを保っている。
だが、こうして社会的な問題を引き起こしながら、説明はおろか、今後の再発防止のための対処についてもコメントしようとしないAKB運営の態度は、もっと糾弾されるべきだ。未成年者を多く抱えるアイドルグループで、あろうことか、運営の幹部が盗撮という刑事事件の犯人だったのだ。それを人気維持のために闇に葬ろうとするのは、社会的責任の放棄であり、なにより被害者であるメンバーたちに対して不誠実すぎるのではないか。
先日、卒業を発表した川栄は、卒業理由を“握手会に出られないこと”と説明した。昨年の握手会襲撃事件で傷害を負った川栄と入山杏奈は、いまだ握手会には参加できていない。突然、見知らぬ男に殺されかけたのだから、当然の話である。しかし、傷を負ったのは彼女たちだけではないはずだ。同じ会場にいたメンバーも、参加していなかったメンバーも皆、大きな恐怖に包まれ、いまもそうした恐怖と戦いながら握手会に挑んでいるのだろう。それでも、あれほどの事件が起こったのに、AKB運営は約1か月という異常な早さで握手会の再開に踏み切った。その上、世間に広がったAKBへの負のイメージを払拭するため、御用マスコミを通じて“いかに対策を講じているか”をアピールさせた。
握手会に参加できないという理由で卒業を決めた川栄の言葉は、いかに運営がメンバーの心のフォローをおろそかにし、商品として扱ってきたかを浮き彫りにしたが、今回の盗撮問題も結局は同じ話だ。運営側の失態を警察を通じて隠蔽し、被害者たるメンバーたちへ公に謝罪することもなく、マスコミを操作して何事もなかったかのように振る舞う……。こうしたAKB運営の“封殺”は、一体いつまで許されつづけるのだろうか。
(大方 草)
最終更新:2017.12.23 06:42