「『週刊』の新谷(学)編集長はもともと安倍さんと親しく、最近は菅さんとべったりなんです。もちろん、バランスはとって、親しくない閣僚のスキャンダルなどはやりますが、基本的には官邸の味方。『週刊』はこれまでも重要な局面では、官邸リークの記事を必ずやってますよ」
え? 新谷編集長が安倍首相のオトモダチ? 初耳だったが、これは知る人ぞ知る話らしい。
きっかけは安倍最側近で、例の選挙報道をめぐる圧力文書を放送局に送りつけた萩生田光一・自民党副幹事長と古くからの付き合いだったことだといわれている。その関係で、第一次安倍政権が誕生する2006年の自民党総裁選の準備運動として出版された『美しい国へ』(文春新書)の文春側の担当となり、実は担当どころかゴーストライターに匹敵するくらいの働きをしたという。「美しい国へ」というタイトルも実は新谷氏の考案で、以後、安倍政治がめざす国家像を表す言葉として定着している。
こうした関係はその後も続いた。現在は安倍首相はもとより、菅義偉、杉田和博、世耕弘成正副官房長官をはじめとする“チーム安倍”の中枢に食い込み、「官邸」はいつしか「週刊文春」にとって有力な情報源のひとつとなっていった。
もちろん、権力サイドをネタ元として取り込むのは週刊誌編集者として当然の仕事だ。新谷氏も当初は“節度”を持った付き合い方をしていた。
だが、その関係は徐々にエスカレートして、最近、越えてはいけない一線を踏み外したのでは、との指摘が文春社内からあがっている。
ひとつは、2月5日号掲載の〈後藤健二さん 書かれざる数奇な人生〉だ。言うまでもない、「イスラム国」に拘束・殺害されたジャーナリスト、後藤健二さんに関するリポートだが、〈「10分300万円」に命を賭けた〉〈ボディビルジムで500万円トラブル「風俗店経営」証言も〉〈「前妻とはイラク行きが原因で離婚〉〈今の妻は東大卒JICA職員 自宅は赤坂マンション〉といった見出しを見ても分かるように、あからさまに後藤さんを貶める内容だ。
後藤さんがなぜ一人で「イスラム国」に入ったのか、その理由はいまだ定かでないにもかかわらず、同記事には「知人の湯川さんを救出するためだったとされていますが、どうしても納得できない」「(湯川さんを)心配していたのは間違いないですが、救出のためにシリアに渡ったとは考えにくい」といった匿名のコメントが繰り返し出てくる。先に拘束されていることが伝えられていた湯川遥菜さんの救出に日本政府がまったく動かなかったため、見かねた後藤さんが救出に動いたとする“美談”をとにかく必死で打ち消そうとしているのだ。前出の中堅社員がこう打ち明ける。
「美談の裏を暴くというのは週刊誌の常套とはいえ、なぜあの段階で後藤さんのことをあそこまで悪く書かなければならなかったのか。編集部内や特派記者の間からも違和感があるとの声が聞こえてきました」