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ドイツ航空機墜落は副操縦士だけの問題か? 格安航空会社(LCC)のここが危ない!

 杉江氏が指摘する現状のLCCの問題点は3つある。整備の外注化と機材使い回しのオペレーション、そして乗務員(とくにパイロット)の待遇だ。

 航空機整備には大きな格納庫と整備人員が必要で、既存航空会社でもコスト削減のため一部を外部の専門会社に出す例もある。だが、LCCでは整備のほとんどすべてを外注するケースが珍しくない。こうなると、自社内で航空機の故障やトラブルと向き合う整備士のスキル向上という面でマイナスとなる。外注そのものが悪いということではなく、中長期的に人が育たなくなってしまうということなのだ。

 LCCの最大の特徴は効率のよい運航オペレーションにあるといっていい。保有機をいかに無駄なく使い回し、少ない機材で多くの便数を飛ばすことができるかが勝負だ。宿命的に予備機(問題が生じたときに備える代替機)をほとんど持たないことになる。便と便の間の地上滞在時間も少なければ少ないほどよいとされる。そうなると、いきおい整備上の問題が発見されても、無理をして飛ばそうということになりかねない。

 だが、杉江氏がもっとも危険だと警告しているのが「機械」より「人」に関する問題だ。なかでもパイロットの過労とモチベーションの低下は重大事故につながる可能性がある。効率的な運航のため、LCCでは1日に5回も6回もの離着陸を強いられる。〈そうなると、1日の最後の着陸ともなると疲労から集中力が欠けてくる恐れがある〉(同書より)。それだけではない。夜遅くにホテルにチェックインして朝早く乗務するというのも当たり前だ。地上滞在時間は短く、乗務と乗務の間に機長が客室清掃を手伝うこともあるほど慌ただしい。それでいて労働条件(給与)も決してよくないから、会社への帰属意識も低く、モチベーションが維持されない。健康管理面での支障が出る可能性は否定できない。

 93年8月にアメリカン・インターナショナル・エアウェイズ社のDC8・61型機がキューバのグアンタナモ海軍基地で滑走路手前の地面に激突し、炎上する事故が起きた。このときの機長はアトランタで深夜勤務を終えて自宅に帰る途中、会社から、前日に欠航となった貨物便をノーフォークまで運び、そこで貨物を搭載してグアンタナモ基地へ行き、その後、フリーでアトランタへ戻る勤務を指示された。機長は疲労を感じていたが、断ることができなかった。事故後の公聴会では、「ベースレグからファイナル(最終コース)へ旋回したとき、何となく無気力でどうでもいいような気分を感じたが、飛行場を探したか、パワーを増したか減らしたか覚えていない」と証言した。貨物便なので乗客はいなかったが、そら恐ろしい話である。

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