『そこまでやるか!裏社会ビジネス 黒い欲望の掟』(さくら舎)
普段生活している分にはあまり感じることのない“裏社会”の存在。日々アウトローたちが非合法なビジネスを展開していることは知っていても、それを体感することはそう滅多にあることではない。
しかし、ここ最近は合法・非合法の境界線上にある“グレーゾーン”のビジネスが拡大。一般市民が知らず知らずのうちに裏社会と接点を持つことも少なくないという。
その接点の最たるものが、いわゆる“振り込め詐欺”だ。犯罪ジャーナリスト・丸山佑介氏の著書『そこまでやるか!裏社会ビジネス 黒い欲望の掟』(さくら舎)では、以下のように解説されている。
「詐欺グループの大半は、完全に裏社会の人とは言いがたいところもあるのですが、彼らを使っている側は、ほぼ黒に近いグレーと言えるでしょう。準暴力団や半グレと呼ばれる人たちです」
広域指定暴力団、つまりヤクザが黒だとしたら、準暴力団や半グレは黒に近いグレーとなる。準暴力団という呼び方は、「関東連合」に代表されるような暴走族OBグループを警察庁が規定するために生まれた言葉だ。関東連合のほかには、中国残留孤児の2世、3世が中心となって組織された「怒羅権」などが、代表的な準暴力団・半グレと呼ばれる組織である。
そして、もうひとつ、表社会に侵食しているグレーゾーンな裏社会ビジネスの代表例が、セックス産業、つまり売春だ。
組織的なビジネスとして売春を行う場合、複数の女性を管理し、その待機場所や行為を行うための部屋を用意する必要がある。その部屋の存在をもってして、管理売春と見なされ当局に逮捕されるわけだが、最近はそういったリスクを負わない売春ビジネスも増えているというのだ。
「性別・年齢問わずに誰もが簡単にアクセスできる出合い系のツールが充実していれば、専門の業者を介する必要すらなくなり、女性自らが客を取る個人売春や、女の子四、五人を動かして女衒の真似事をする『プチ管理売春』のような援デリ商法が盛んになってくるのも、無理からぬことです」(同書)
体を売りたい人と買いたい人が簡単にマッチングできる出合い系ツールによって、グレーゾーンな売春が増加しているのだ。『そこまでやるか!~』によると、合法とされているセックス産業の市場規模は5兆円で、裏風俗産業の市場規模は500億円。そこまで大きな市場規模ではないため、ヤクザの参入も少なく、だからこそ警察もあまり興味を示さない。裏を返せば、裏社会や警察に気付かれることなく、ひっそりとプチ管理売春を行っている一般人がいるかもしれないということでもある。グレーゾーンがどんどん広がっていることを示す事例のひとつだといえそうだ。