まず、自社ブランドが入っていた「百貨店全体がおかしくなった」といい、売り上げが激減。「一階で20万円以上の商品は売ってはならない」ことになり、「実質的にダイヤモンドの販売ができなくなった」という。
以後、百貨店販売から撤退した彼女は、〈全国の各百貨店やデパートの宝飾催事をまわった〉が、不況は生半可な深刻さではなかった。後はお決まり。〈銀行への返済ができなくなり、資金がショートした〉。それが彼女の、AV女優になった動機だった。
「銀行返済のためにAV女優になったんです。少しでもお金になるかなって」
ここで初めて具体的な数字が出るのだが、現実的ではない額に思考が追いつかなくなる。
〈銀行への支払いは月400万円〉
2014年、サラリーマンの平均年収は442万円。それを彼女は、たった1ヶ月で稼がねばならなかった。とうてい無理な話だと思うが、なんと彼女は、〈AV出演と催事の販売を繰り返し、なんとか400万円作って〉支払っていたというのだ。
さらに驚くべきは、AV女優になったことを会社の従業員に話し、その上「旦那や旦那の親にも話した」ということ。これには中村氏も驚きを隠せなかったが、それに対して逆に彼女は〈「え?」と驚いた顔〉をしていたそうだ。
そんな旦那が、ある日突然、消える。これもよくある話だが、やはり規模が違うのだ。
「旦那が300万円くらいの在庫を全部持って逃げちゃったんです」
連帯保証をしていた彼女に降りかかった会社の借金、その額、1億3000万円。借金をしているAV女優は多いが、まさかこんな数字が企画AV女優の口から出るとは誰も思うまい。
さらにすごいのは、自己破産をせず、AVのほかにも〈様々な仕事に手を出して、現在も朝昼晩関係なく働きまくっている〉結果、「今のところなんとかなっている」と、一連の話を〈笑いながら話している〉ところだろう。
その壮絶な境遇に驚かされたかと思いきや、本当に度肝を抜かれるのは、彼女の“強さ”だったとは。何があっても懸命に生きることの清々しさを、ときにAV女優は教えてくれるのだ。
(羽屋川ふみ)
最終更新:2015.03.09 11:27