『子どもに貧困を押しつける国・日本』(山野良一/光文社新書)
国連開発計画(UNDP)が2014年7 月に発表した「人間開発報告書」2014年版によると、国民生活の豊かさを示す豊かさ指数(HDI)の1位はノルウェーで、2位のオーストラリア、3位のスイスなど以下欧米諸国が並ぶなか、日本は韓国の15位よりも下位の、17位であった。先進国のなかでは低い方だ。報告書では世界で22億人が貧困か貧困に近い状況に置かれていること、全労働者の半分近くに当たる15億人が非正規雇用で、世界人口の8割が年金など包括的な社会保障を受けていないという指摘がなされている。こうした中での17位は豊かといえるかどうかも微妙である。
そんな日本で現在、6人に1人の子どもが貧困状態にあるというショッキングな事実が示された。『子どもに貧困を押しつける国・日本』(山野良一/光文社新書)によると、日本における貧困状況にある子どもの割合(相対的貧困率)は、本書刊行当時の厚生労働省の最新データ(2012年)では16.3パーセントとかなり高いものであるという。またユニセフ・イノチェンティ研究所のレポート「レポートカード10」におさめられている「子どもの貧困測定」では、2009年頃のデータにより測定された各国の貧困率が示されており、日本は先進国中ワースト4位の貧困率となっている。
この貧困率とは「貧困ライン」という基準に満たない所得で暮らす子どもの“割合”だ。「貧困ライン」はおおむね、そこに住む人間の年収から、社会保険料や税金等を差し引き、政府からの公的な援助を足した可処分所得を算出したうえで、その平均値ではなく中央値を決め、さらにその中央値の半分……として計算する。日本の貧困ラインは2012年のデータでは122万円。これは1人世帯の金額で、親子2人世帯では年間約173万円(月額約14万円)、親子4人世帯では約244万円(月額約20万円)となる。
親子2人で月額約14万円と聞くと、「ぎりぎりなんとかやっていけるのでは?」などと言い出す人間がいるが、それはあまりに現実を知らなさすぎる。
「先述したように、ここからは税金や国民健康保険料を払う必要はありません。しかし、この額には児童手当や児童扶養手当のような政府から援助されるものもすでに含まれているのです。この額から、家賃・食費・水道光熱費・電話代・交通費・子どもたちの養育費などを払うと、ほとんど何も残らない額になるのではないでしょうか」
いま、日本の子どものうち、6人に1人がこうした生活を強いられているのだ。しかも、実際はこの貧困ライン122万円よりはるかに低い所得の家庭にいる子どもたちがかなりの程度いるといわれている。
「気をつけていただきたいのは、貧困な子どもや家族の所得は、この額より少ないということです。この額は上限でしかないのです。貧困な子ども全体がどれほど貧困であるかは、まだ見えてきません」
「2009年の貧困ラインは125万円でした。この数字を基に計算してみると、日本で貧困状態にある子どもたちの所得の中央値は、86万円程度なのです。」