この対談の時点で、安倍首相と昭恵夫人は結婚して26年目、銀婚式も過ぎている。にもかかわらず、一度も夫人に「ごめんなさい」と謝ったことがないとは……。なかなかの頑固者である。
たとえば、靖国参拝や慰安婦発言によって安倍首相は日韓関係を悪化させている張本人なのに、昭恵夫人はそれに反して一昨年に「日韓交流おまつり」へ参加したところネトウヨからバッシングされたことに対し「何を言われようがお隣の国。特に下関は釜山と姉妹都市でもあり、本当に近い所なので、できる限り親しくしていけたらいいなと思う」と述べるなど、熱心な日韓友好派。昭恵夫人いわく「韓国や中国の話になると批判される」というが、それでも昭恵夫人の行動を封じ込めないあたり、安倍首相は彼女に頭が上がらないのでは?と見る向きもあった。しかも、昭恵夫人は神田で居酒屋経営に乗り出すなど、まさに自由奔放。世のおばさまたちは「妻に理解のある、仲のよい夫婦なのね」と感じていたはずである。が、実際は26年間一度も妻に謝ったことがない“俺様”夫だったわけだ。
そして、思わず「なるほど」と膝を打ってしまうのは、“意見が対立すれば、お互いの齟齬をなんとなくうやむやにし、忘れてしまう”という点だろう。これは決して家庭だけの話ではない。第一安倍内閣でも、辞任会見では「なかなか国民の支持、信頼の上において力強く政策を前に進めていくことは困難な状況である」と、よくわからない理由でお茶を濁し、再びひょっこり首相になると、前回の辞任理由を体調問題にすり替えていた。だいたい先の総選挙を行った理由も、安倍首相はもにょもにょと理由付けしたが、その明確な意図はうやむやにしたままだった。
不都合な話は曖昧にし、そして絶対に謝らない──。この昭恵夫人の告白は、じつに安倍晋三という人間を理解する上で示唆に富んでいる。とくに安倍首相は、これまで個人的願望と現実的政策を混同してきた。おそらく、安倍首相は弱腰という言葉を非常に嫌うマッチョ思考で、謝ることに潜在的抵抗があるのだろう、ということがよくわかる。
もしかしたら、安倍首相が国際社会からあれだけ批判を受けながら、先の侵略戦争や従軍慰安婦問題への謝罪をはっきりと表明しないのも、その歴史観だけでなく、この謝りたくない体質にも起因しているのではないか、とも思えてくる。
そうなると、気になるのは終戦70年を迎える今年、終戦記念日に安倍首相が発表する「戦後70年談話」だ。いくら安倍首相でも、家庭での振る舞いと国際社会の問題くらいは分けて考えられるくらいの頭はあると信じたいものだが、まさか……。
それにしても、アッキーに「ごめん」くらいは言えないと、“女性の活用”なんて無理な話だと思いますよ。
(伊勢崎馨)
最終更新:2017.12.13 09:36