ところが、日本のメディアやファンは、浅田が負けると「八百長だ」「不正だ」と騒ぎ立てる。ことキム・ヨナに対しては、嫌韓感情も相まって攻撃が激しかった。その無邪気なアイドル性で国民的人気を得た浅田は“日本の希望の星”となったが、そこに登場したライバルは韓国のキム・ヨナ。──中国や韓国が経済力をつける一方、不況の閉塞感に包まれていた日本では、浅田に対する期待とキム・ヨナに対する非難が過熱することになった。だが、そのようなキム・ヨナとの比較を抜きにしても、浅田の技術を冷静に批評してこなかったメディアの責任は大きい。それは、異常な「トリプリアクセル」信仰だ。
これまでずっと、あたかもトリプルアクセルが成功しさえすれば勝てるかのように報道されてきたが、「ジャンプやスピン、滑りなど何十項目ものチェック」という採点方法を考えれば間違いであることがわかる。さらに、浅田の実情はトリプルアクセルの次に得点の高いトリプルルッツを跳べず、トリプルサルコウも苦手、3回転3回転の連続ジャンプは回転不足になってしまう……という状態。既報のとおり荒川静香も「一般的には浅田選手はジャンプ技術が持ち味で、ヨナは表現力で勝負していると思われがちですが、私から見るとむしろ逆なのです」と指摘している。にもかかわらず「難易度の高いプログラムにチャレンジする浅田」とメディアは称賛したが、実際は一か八かのトリプルアクセルに頼る以外に戦う術がなかっただけ。このような現状に目をつぶり、メディアはただ贔屓の引き倒しで過剰なプレッシャーを与えてきたのだ。
おそらく、2015年も現状のルールのままだと、浅田復帰の可能性はかなり低いだろう。実際、14年のシーズンでは、昨季まではエラーをとられていなかった選手がe判定とされるなど、エラーはかなり厳密にとられていた。回転不足にも厳しい。このルールでは、浅田が勝つのは相当に難しいと言わざるを得ない。一部では、昨年のルール改定前に「ルールを見て引退か現役続行かを判断するのでは」という報道が流れた意味を、“こういうルールなら復帰してもいい”とスケ連にプレッシャーをかけていたのでは?と見られているが、これもあながち外れていないのかもしれない。
昨日、TBS『S☆1』のインタビューでも、「『ハーフハーフ』が『復帰80%、引退20%』になるときもある」としつつも、「復帰するからには勝ちたい。辛いこともある」と決断にいたれない心境を語っていた。4月ごろには復帰か否かが発表されることになるかと思われるが、果たしてその決断はどんなものになるのだろうか。
(本田コッペ)
最終更新:2017.12.09 04:48