原子力規制委員会ホームページより
12月10日、ついに特定秘密保護法が施行された。安全保障にかかわる情報を特定秘密にして、漏洩した公務員らに懲役刑を課すというものだが、疑問視されてきた運用基準はいまも曖昧なまま。しかも、どれが特定秘密なのかを指定するチェック機関は政府内に置かれていることを考えると、国家が恣意的に情報を隠蔽、コントロールし、報道の自由さえ脅かすのがこの法案の本質だ。実際、この法を管理する内閣情報調査室が「海外生活や留学経験者は国家機密を漏らす恐れが高い」などという時代錯誤の見解を出したことでも分かるように、そもそも適正な運用など不可能であることがすでに露呈している。
これを前のめりで進めた安倍晋三首相は、「報道が抑圧されたら、私は辞める」などと大見得を切ったが、その舌の根も乾かぬうちにテレビ局に対し、〈報道の公平中立確保のお願い〉などという脅し文書を出しているのだから、何をかいわんやである。
しかも、秘密保護法が施行された同じ日、これに連動するように、国民の知る権利と安全さえを脅かすとんでもない決定があったことをご存知だろうか。
それは、原子力規制委員会(以下、規制委)が10日に、“福島第一原発では今後、国際原子力事象評価尺度(INES)を無視する”と決めたことだ。
INESは、原発事故や事象をレベル0から7までに分け、レベル2以上の場合および国外で公衆の関心を集めたり、新聞報道が必要となったときには、24時間以内に国際原子力機関(IAEA)を通し、加盟各国に通達することになっている。これは重大な放射線汚染をいち早く察知し、国際的に対策をとるためだが、しかし、共同通信の報道によると、規制委は福島原発が最悪レベルの7に評価されたことで「尺度の評価基準をそのまま適用すると『誤解』が生じる」として、今後INESの数値を使った数値を福島原発に適用しないと決定したのだ。
INESを適用すると「誤解」を招く──。この規制委の意図は容易に想像できる。福島原発は現在でも事故終息とはほど遠いのが現状だ。汚染水は増えつづけ、それを防ぐ凍土壁は短期的な対策に過ぎず、しかも未だ「凍らない」との報道さえある。来年から着手予定の燃料の取り出しも、周辺の放射線が高くて見通しも付いていない。
規制委にいわせれば、「こんな状況で発生するトラブルをいちいち評価、報告などできない」ということなのだろうが、それはいまだ廃炉作業が進展せず、汚染も深刻だということの裏返しでもあるのだ。