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紅白落選でもラスボス小林幸子が示した“干され芸能人”の生きる道

 同じく「週刊文春」12年10月18日号は、「芸能界のドン」と呼ばれ、マスコミにも大きな影響力を持つ大手芸能事務所バーニングの社長が元社長・元専務の後ろ盾となったために、スポーツ紙やテレビは小林に対するネガティブキャンペーンを開始し、小林が知人に送ったメールがそのままマスコミに流れたこともあった、と報道。さらには、事態を重く見たレコード会社が新曲発売の延期を決め、レコード会社との契約解消する事態に追い込まれた。

 作詞家・作曲家といった音楽関係者もバーニングを敵に回した小林との仕事を敬遠し、スタジオさえ借りられなかったために、別の歌手の名前を使ってレコーディングに及んだという。周囲に圧力をかけて小林を孤立させる……まさにバーニングの常套手段といったところだろう。

 普通なら、ここで完全に消え去ってしまうか、バーニングに屈服して元の鞘におさまるところだが、小林はどちらも選ばなかった。小林が活路を見出したのは、それまでまったく縁がなかったオタク界隈だった。

 もともと、小林は紅白でおなじみの「火の鳥」や「メガ幸子」といった巨大衣装がRPG系のゲームに出てくる「ラスボス」のような威圧感だとオタク界隈でひそかな人気があった。小林はそのことに気づいて、騒動直後の2012年にニコニコ生放送に出演を皮切りに、ニコ動に積極的にかかわりはじめる。その年の年末には、ニコ動の年越しイベントに動画コメントの形で参加し、13年9月には、ニコニコ動画に“歌ってみた”動画を初投稿した。すると、わずか2日あまりで100万回再生を突破。これで、小林は完全に覚醒し、オタク路線を本格化させた。

 昨年の大みそかにニコニコ生放送で配信された『ラスボス小林幸子による年越しライブ&カウントダウン』では、VR(仮想現実)、AR(拡張現実)、プロジェクションマッピングなどの最新技術を使ったド派手な演出で観客を魅了し、番組の総来場者数は85万4946人、総コメント数は26万7167コメントを記録するなど、演歌歌手としては異例の人気を博した。そして、先に紹介したコミケへの参加……。小林は音楽系ニュースサイトで、オタク路線に踏み込んだ心境を以下のように語っている。

「私も面白がるほうですから(笑)。躊躇しなくてわりとスッと入っていく性格なもんですから、大スベリするかもしれなかったんですけど、やっていったことが受け入れていただけたのかなって思います。とりあえずやってみる、というのが、今回の新しいことに全部つながっていった感じですね。」

 しかし、小林はたんにやってみただけでなく、オタク文化をかなり理解しているようだ。先述したコミケでは、猛暑にもかかわらず、買えなかったファンに握手して回る“神対応”を見せたり、一般人と同じ入り口を使用し、他のブースに行ってあいさつする「ご近所回り」をしたりとコミケのルールも守った。こうしたことがさらに好感度をアップし、現在の破竹の勢いを生み出したのだろう。

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