だが次第に愛想を尽かす出来事も起き始める。ある時、著者に酒井から電話があった。
「三浦さん、魔界から通信がありましてね。明日、東京は大震災が起きて壊滅状態になりますので、絶対に上京してはいけませんよ」
そう聞いた著者は終日千葉の事務所にこもったが、大震災は起こらない。翌日、聞いてみると、酒井は「(魔界から)我々はおまえを試すつもりででたらめを告げ、その後、おまえがどんな態度をするのはみていたのだ、って」などと言い訳をしたという。
このあたりから、徐々に酒井に不信感を持ち始めた三浦サンは酒井のこんな言葉で完全に愛想をつかしてしまう。
「わたしがパワーを伝授した女性は胸が大きくなるんですよ。(略)だから、彼女たちに言ってやるんですよ。オレのおかげで胸が大きくなったんだから、触らせろ、ってね。ハハハ」
しかし、こうして読んでいると、オカルト業界の教祖やら霊能師やらのトンデモぶりもさることながら、それよりも驚かされるのは、著者の三浦サンの“懲りなさ”加減である。
とにかくオカルトに出会ってはいとも簡単に傾倒し、そして結局、最後は怪しいと愛想をつかす。騙されては、そのたびに「騙されていた」と怒るという繰り返しなのだ。しかしそれでもなお彼女のオカルト信仰は止まらず、懲りずにオカルト世界に近づき、騙され続ける。
これでよくライターという仕事を続けてこれたなと驚嘆するが、一瞬でインチキとわかるような説明にもなんの疑問も持たず「これが探し求めていたものだ!」と思いこんでしまうそのメンタリティを考えると、著者はやはりライターというより、本気のオカルト信者だったのかもしれない。
そういういう意味じゃ、この本、オカルト業界の内情というより、オカルト業界から「カモ」にされやすい人の思考回路を教えてくれる一冊といってもいいだろう。
「オカルト業界で揉まれに揉まれてきた現在では、素直にオカルト業界を肯定することは難しくなってきた」
著者はオカルト業界にかかわった20年近くをふりかえってこんな総括をしているが、いやいや、このぶんじゃ、あなた、またきっと騙されますよ。
(林グンマ)
最終更新:2018.10.18 05:21