「在特会をはじめ草の根右翼の人たちは民主党政権に危機感をもち、必然的に自民党に希望を託すようになった。逆に野党に転落した自民党は、在特会やウルトラナショナリストを動員のコア・マーケットとしてとらえざるをえなくなった。両者の利害が一致したということでしょう」(前出・安田氏)
そして、12年の自民党総裁選では、在特会は再登板の安倍首相を全面支持し、安倍首相の演説会場に必ず多くの会員が集まるようになった。さらに自民党が圧勝した衆院選、参院選では、演説する安倍首相を支持者が日の丸の小旗をふって応援するというこれまでにない光景が見られたが、そのメンバーの多くは在特会関係者だったという。全国紙の政治部記者がこう証言する。
「公にはなっていませんし、在特会側も機関決定などはしていませんが、自民党の議員が在特会関係者に選挙を手伝わせたり、動員をかけたりしているのは常識です」
まさに、今の自民党主流派にとって在特会は、れっきとした支持団体なのだ。議員会館に出入りして記念写真を撮っていてもなんの不思議もない。
しかし、問題は国際社会の反応である。前述したように、在特会は国連の人種差別撤廃委員会でも問題になり、日本にはヘイトスピーチの法規制が勧告されている。そんな団体と民主主義国家の政権が密接な関係を維持していくことが国際社会の中で果たして許されるのか。
だが、安倍政権の面々はそんなことはまったく意に介していないようだ。9月22日発売の「サンデー毎日」(毎日新聞社)によると、ヘイトスピーチの法規制を検討する自民党PTで、メンバーの一人で安倍チルドレンでもある山田賢司衆院議員がこう言い放ったという。
「国連に“チンコロ”しているのはどんな団体か。ネットで調べると、ほとんどが朝鮮総連など朝鮮系の団体だ」
「人権をうたう団体は日本をおとしめるために人権団体と言っているだけ」
まるでネトウヨ並みの発言だが、同誌は自民党PTに加わっている別の衆院議員もこんな本音をもらしたとも報じている。
「在特会と関連団体はあくまで安倍自民党の支援組織という位置づけ。たしかに国連の勧告は無視できないが、かと言って支援者を排除するような対策を講じれば、いずれ手痛いしっぺ返しを食らうかもしれない。のらりくらりと議論を引き延ばしつつ、規制を緩く設定できるようにしたい」
こういう発言を聞いていると、自民党では想像以上にこのヘイトスピーチ団体の影響力が高まっているのではないか。そんな不安が頭をもたげてくる。だが、前出の安田氏はこう語る。
「みなさんは在特会の影響を危険視しているようですが、在特会はそこまで政治的に影響力のある団体ではない。むしろ、問題は在特会ではなく、政権を担う閣僚の思想が在特会とほとんど変わらなくなっているという事実でしょう。だから、高市氏にしても山谷氏にしても平気で在特会関係者やネオナチ団体幹部を受け入れてしまう。ある意味、自民党が在特会化しているわけで、そのほうがずっとこわいですね」
ヘイトスピーチの最大の発信源は、我々が選んだ政権の内部にあるということらしい。
(編集部)
最終更新:2015.01.19 05:29