『老親の家、片づけます!』(アート引越センター・エプロンサービス監修/小学館)
待ちに待った夏休みとお盆。久々に実家に帰郷した人も多かったのではないか。しかし──。高齢の親を持つ人は実家の様子を見て、ふと、こう思わなかっただろうか。
「なんか、前に帰ってきたときよりやけにモノが増えてないか」「親がいなくなったら、このあふれかえっているモノをどう処理するんだろう?」
そう。近年、高齢親を持つ人々を悩ませている深刻な問題が「老親の家を埋め尽くす膨大なモノの数々」という、高齢者の“片付けられない”問題だ。賞味期限切れの保存食の山に料理レシピや体操メモ、何年も前の広告の切り抜きなどのきれ紙の数々、なぜか5台もある掃除機などの不要家電、今や再生不能のVHSビデオテープ、何年も出したこともない雛人形や思い出の写真の品の数々……。
ゆっくり実家でダラダラしようなんて呑気な思いは吹っ飛び、「何やっているの!」「片付けて!」と思わず感情的に怒鳴ってしまう。そんな経験を持つ人も多いらしい。部屋がモノであふれていれば掃除も行き届かなくなり、不潔になる。しかも地震大国の日本では老親の身の危険さえある。子どもたちが心配するのは当然だが、しかし感情的になっても事は解決しない。では、そんな時、どんな解決方法があるのだろう。
『老親の家、片づけます!』(アート引越センター・エプロンサービス監修/小学館)には、過去19年間、親世代の家の片づけサポートをしたプロたちによる様々な片づけテクニックが紹介されているが、中でも最も大切なのは老親を“やる気”にさせる数々の心理的作戦らしい。
そもそも年老いた親たちは、なぜ家を散らかすのか。その心理を知ることは老親をやる気にさせる第一歩だ。
まず、老親の家は概して広いという物理的問題がある。
「かつては親子で住んでいた家からお子さんが独立して出ていくと、その分のスペースができます(中略)モノを置くスペースができた分だけ、モノが増えてしまう」(同書より)
これは子どもがいなくなった寂しさを、モノで埋めるという側面もあるという。