さて、本書には携帯になれていないゆえに発生するメールのほかにも、かあちゃんのすごさ、突き抜けたセンスをこれでもかと感じさせるようなメールも数々掲載されている。たとえばこちら。地震があった日、我が子から「地震、大丈夫?」という安否を気にするメールが届く。それに対してかあちゃんが返したメールが……。
「私が鎮めた」
お前のかあちゃん、いったい何者?と、思わず聞いてしまうような内容である。
「ドラえもんの鈴って鳴ってるとこ見た事ある? あれ、フェイクでしょ。」
フェイクて……かあちゃん、フェイクて……。ほかに言い方はなかったのだろうか。いやむしろ、このメールを見た今となっては、フェイクという言い方がベストなのではないかと思えてくる。
かあちゃんが父と喧嘩。家を出ていってしまったという。すわ一大事。家庭におこる最大級の事件である。焦る我が子のもとへ一通のメールが届いた。なんと、かあちゃんから。そこに書かれていたのは……。
「突然いなくなってごめんね。母さん頭を冷やそうと思います。しばらくフランスのロンドンへ渡米します。」
どこへ行ったんだ! いや、どこへ行くんだ! もうまったくわからない。
子を思う母の愛。それは何ものにも代え難く、美しいものである。家を出て自立した我が子が風邪をひいた。いてもたってもいられなくなったのだろう。かあちゃんはこんなメールをよこしたという……。
「かぜ大丈夫?お母さん心配して、8時間くらいしか寝れなかったよ。」
かあちゃん、理想的な睡眠時間だよ……すごくぐっすり寝られたようで、こっちは安心したよ……ただ、もし、我が子がブラックな職場で働いている身分であったのなら、悔しさと怒りのあまり、風邪が全快してしまうかも……。
というふうに、本書に載せられた、かあちゃんから我が子へのメッセージの数々は爆笑必至。と同時に、見れば張りつめていた心をほぐしてくれる効果もある。そうなのだ、かあちゃんはいつもこうやって自然に、朗らかに、子どもの心をほぐし、ポッとやさしい明かりを点けてくれるのだ。
本書を読み進めるうち、むしょうにかあちゃんに連絡をとりたくなっている自分に気づく。そこで久しぶりに連絡をしてみることにした。
この原稿を書いている現在、メールを送ってから1 週間が経っている。かあちゃんからの返信はない。いっこうにない。
(オンダヒロ)
最終更新:2018.10.18 05:23