『中高年正社員が危ない』(小学館101新書)
過去最大規模の顧客情報漏えい問題は起こるべくして起きたのかもしれない。
通信教育事業「進研ゼミ」などで知られる通信教育大手ベネッセホールディングス(以下、ベネッセ)の顧客情報漏えい問題がニュースになっている。顧客情報のうち、約760万件の漏えいが確認され、最大で約2070万件が流出した可能性があるという。消費者庁によると、760万件は過去最悪の規模だ。
問題が発覚したのは、通信教育事業を手掛けるソフトウエア会社「ジャストシステム」が出していたダイレクトメールにベネッセしか知りえない顧客情報が含まれていることを不審に思った顧客からの問い合わせが相次いだためだ。ジャストシステムは名簿業者から購入したとしており、今後はその流出経路に世間の注目が集まりそうだ。
折しも、ベネッセは約2週間前に、新会長兼社長が就任したばかり。その新会長兼社長が日本マクドナルドホールディングスなどで経営トップを務めた原田泳幸(えいこう)氏であったこともあって、マスコミの格好の話題となっている。
「ベネッセは創業家の福武一族によるワンマン企業。急逝した先代のあとを継いだ福武總一郎氏は、03年にもソニーに『執行役員制』を導入したソニーOBを社長に迎え、リストラを進めV字回復をはたしたものの、そのソニーOB社長が女性問題で失脚。最近のベネッセは教育のICT化(IT化)に乗り遅れ、国内の会員数(今年4月時点)は、365万人と損益分岐点とされる『340万人』がすぐそこに迫りつつあった。危機感を感じた福武氏は、再び、外部のプロ経営者として、原田氏を招聘することになった)(経営ジャーナリスト)
就任したばかりの原田体制はスタートにケチがついたものの、記者会見では謝罪とともに「再発防止と、流出した情報の拡散防止に取り組む」と効率経営への改革の継続姿勢を表明した。
「原田氏はマクドナルド時代にも効率経営を目指した徹底したコストカットで知られる人物。2009年には従業員から、権限や裁量のない『名ばかり管理職』にされ、残業代を支払わないのは不当として、2年間の未払い残業代や慰謝料などを求める裁判を起こされ、高裁で和解金1000万円を支払うとする和解が成立したこともある。それを受けてマクドナルドは、直営店の店長約2000人に残業代を支払うと発表したほどです。彼の強権ぶりに幹部級の人材も次々に逃げ出し、マクドナルドは経営不振に陥った。このため、事実上の退任に追い込まれたのです。徹底したコストカットと“再発防止策”という名の恐怖政治がベネッセではじまることは明らか」(労働ジャーナリスト)
しかし、これまでもベネッセも実はブラック企業として知られている。そのブラックぶりは『中高年正社員が危ない』(鈴木剛著/小学館101新書)に詳しく紹介されている。