しかも、経団連の政治献金の斡旋による自民党との癒着関係は、献金をおこなった個別の大企業の優遇政策を引き起こしただけではない。それは、安倍政権が献金斡旋の見返りとして法人実効税率を引き下げつづけたことだ。
2014年、経団連の新会長に東レの榊原定征氏が就任したが、榊原氏は会長就任の前日の同年6月2日に「政治献金の斡旋もあらためて検討し、年内に方向を打ち出したい」と言及。すると、この発言の翌日、自民党税制調査会は経団連が要求してきた法人実効税率を引き下げる方針を決定。安倍首相も6日に「来年度から引き下げる」と明言したのだ。その後、法人実効税率は政権発足時の37%から29.74%(2018年度)にまで引き下げられたのである。
経団連が政治献金を増やすと、その見返りに安倍政権は法人実効税率を引き下げ、そのぶんを消費税につけまわす。そして大企業は賃金上昇ではなく内部留保を増やし、安倍政権にさらに献金する……。つまり、自民党と大企業が癒着し互いに私腹を肥やす一方で、国民生活は置き去りにされただけでなく、どんどんと搾り取られていくかたちとなったのだ。その延長線上に岸田政権があり、癒着関係は脈々と受け継がれているのである。
ちなみに経団連は、消費税のさらなる増税をはじめ、社会保険料や自己負担の引き上げなども提言している。今回の政治改革で、岸田首相が「企業・団体献金の禁止」を突っぱねれば、今後も自民党政権は多額の献金を見込んで経団連の言いなりとなり、国民生活はさらに追い込まれていくことになる。
玉川徹氏は「企業・団体献金を禁止できるかどうかというのが肝だってことを、われわれ国民側が意識しておかないとダメ」と強く訴えていたが、カネで政策を買うという金権腐敗を、このまま温存させるわけにはいかない。そのためにも、世論が厳しく岸田政権の姿勢をただしていく必要があるだろう。
(編集部)
最終更新:2024.02.03 08:37