そもそも、萩生田氏の発言は安倍派が受けるダメージを少しでも和らげようとする保身でしかなく、国民からの批判を完全に無視したものだ。その上、安倍派による組織的犯罪を黙認し裏金づくりに勤しんでいたと考えられるような人物を、あたかも“若手議員思いのリーダー”であるかのように持ち上げるとは……。
さらに、田崎氏は「『(予算編成が終わったら)辞表を渡させてください』という萩生田さんを岸田総理が慰留した」「総理は(萩生田氏を)残したいという気持ちが強い。党でいちばん頼りにしていますから」「岸田さんと萩生田さんの関係は依然として良好。さまざまなことの相談相手になっている」と、やたらと萩生田氏の存在感の大きさを強調したのだ。
だが、驚くべきことに、萩生田氏を持ち上げるジャーナリストは田崎氏だけではない。他の大手メディア政治部記者らからも「安倍派解体で萩生田派結成か」「萩生田氏は永田町で株をあげた」「将来の総理の目も残っている」という見方までもが出てきているのだ。
「永田町の常識は世間の非常識」とはよく言われるが、リクルート事件以来の一大疑獄の当事者のひとりと見られる人物を“総理候補”などと褒めそやすとは、異常としか言いようがないだろう。
しかも、気になるのは、田崎氏の発言だ。じつは田崎氏、「僕は日曜日にも月曜日にも萩生田さんとちょっと話したんですけど」などと萩生田氏と密に連絡をとっていることを口にしているのだ。
田崎氏といえば、安倍晋三氏や菅義偉氏、岸田首相といった時の権力者にすばやく食い込んで、「直接、電話で話した」などと関係を誇示。その時々のキーマンとパイプを持ち、相手を利する情報を垂れ流すことで関係をさらに強固なものにしてきた。いわば、芽がある人物に擦り寄り、芽がないと判断するや否や見切りをつけるという“目利き力”で現在の立場を築き上げてきた。
そんな田崎氏が、いま萩生田氏と距離をかなり縮めているという事実を考えれば、「安倍派解体からの萩生田派結成、将来の総理へ」という信じられないような展開が現実味を帯びているといえるだろう。
しかし、あらためて言うまでもなく、萩生田氏は安倍元首相の“悪い部分”をすべて継承しているような人物である。そんな人物が、安倍派が解体したあとに派閥を立ち上げても、それは安倍派の存続にほかならない。