しかし、それ以前に、もっと問題なのは、声を上げた記者たちが「ルールを守っていない記者」として扱われ、批判を浴びていることだ。
言っておくが、今回の会見では、ジャニーズ側が一方的に自分たちに有利な「ルール」を押し付けていた。「会場の関係で会見は2時間」と宣言したのも、質疑応答では「1社1問」「指名した記者にマイクを渡すので質問を」などと指定したのも、すべてジャニーズ側。
不祥事を起こした企業がこんなルールを押し付けてくるなんてあり得ないが、ジャニーズ側はこのルールを盾にして、手を挙げている記者たちを無視。多くの質問に答えることなく、会見を終えてしまったのだ。
実際、統一教会追及で知られるジャーナリストの鈴木エイト氏もこの会見に参加していたが、会見についてX(旧ツイッター)にこう投稿していた。
〈前回とは異なり質疑応答は途中で終わり、最後まで当ててもらえなかった。確認したかったのは逸失利益に関すること〉
また、評論家の荻上チキ氏も『荻上チキ・Session』(TBSラジオ)で、TBSラジオの澤田大樹記者とともに会見に出席、2人とも挙手していたものの指名されなかったとして、「まだまだ手が挙がって、指されていない方が多くいた」と語った。
しかも、ジャニーズ側は意図的に厳しい質問をする質問者を避けていたフシがある。たとえば、前回、会見に参加してジャニーズに対して厳しい追及をおこなった東京新聞の望月衣塑子氏や「Arc Times」の尾形聡彦編集長は、手を挙げていたにもかかわらず、まったく当てられなかった。当の尾形氏はこうツイートしている、
〈最前列の真ん中に座って、ずっと手を挙げ続けた私と望月さんを絶対に当てないことを事前に決めていたとしか思えない会見で、失望し、憤りを覚えました〉
〈最初は当然質問が当たるだろうと思って、黙って手を挙げていました。が、ジャニーズ事務所と司会者側の最前列の私たちを当てないという意思が、会見が進むにつれて明白になりました。途中から、会場で声を上げざるを得ませんでした〉
〈厳しい質問をするであろう私と望月さんを絶対に当てない、という八百長のような不正なルールを容認するわけにはいきません〉
望月記者も「今回は、おそらく私と尾形さんは完全にマークされている感じだった」と述べている。
質問に当てられなかった当事者以外からも、同様の指摘が出ている。会見で質問をおこなったアカデミック・ジャーナリストである柴田優呼氏は、会見後、旧ツイッターでこう指摘している。
〈私が質問できたのは、たぶん前回いなかったから。厳しい内容だったので、すぐ後ろから「長い」と男性の声が飛んだ。前回質問した記者の多くが質問できなかったのではと思った (鈴木エイト氏とか)。「顔が覚えられない」と司会が途中で言ったのは意味深。〉
〈全てシナリオができている、と会場で話す人もいた。調査報告書が求めたメディアとの対話は早くも反故に。〉