本サイトでは繰り返し指摘してきたが、近年、日本では朝鮮人虐殺の史実を葬り去ろうとする動きが加速してきた。1990年代後半から「従軍慰安婦」や南京虐殺など日本の戦前・戦中の犯罪行為をなかったことにしようとする歴史修正主義者の動きが台頭したが、2000年代後半からそれはさらにエスカレートし、明らかな史実である関東大震災の朝鮮人虐殺まで「なかった」と主張する書籍や団体が登場。これがネット上の「朝鮮人虐殺はなかった」デマを爆発的に広めることとなった。
このような朝鮮人虐殺をめぐる明確なデマに対し、本来、政府は積極的に否定すべきだ。ところが、松野官房長官は否定するどころか、「政府内に記録が見当たらない」などと虐殺否定論に手を貸すようなことを発言したのである。批判が巻き起こるのは当然だ。
しかし、これは安倍政権下からつづいてきたことでもある。じつは2015年以降、朝鮮人虐殺にかんする質問主意書が衆参で複数回提出されてきたが、いずれも「政府内に事実関係を把握できる記録が見当たらない」という回答を寄せている。今回の松野官房長官の回答もこれを踏襲したものだというわけだ。
安倍政権が押し進めた歴史修正主義を岸田政権も引き継ぎ、負の歴史をなかったことにする動きを後押しするような言動に出る──。だが、これは政府だけで起こっている問題ではない。より深刻になっているのが、東京都の小池百合子知事の言動だ。
毎年9月1日には関東大震災で虐殺された朝鮮人犠牲者の追悼式典が墨田区の都立横網町公園でおこなわれているが、小池都知事は2017年から、「都慰霊協会が営む大法要で全ての震災犠牲者を追悼している」として式典への追悼文送付を拒否。本サイトでも繰り返し報じてきたとおり、この式典への追悼文は1974年以降、歴代の都知事たちが寄せてきたもので、数々の差別発言で知られるあのレイシストの石原慎太郎ですら送っていた。それを小池都知事は拒否しつづけているのである。
だが、朝鮮人虐殺から100年となる今年、東京都はさらに信じられない言動を見せている。
というのは、近年、朝鮮人犠牲者追悼式典と同時刻に、近距離にある「大正大震火災石原町遭難者碑」の前でヘイト集会を開催してきたヘイト団体「そよ風」が、今年はあろうことか、朝鮮人犠牲者追悼碑の前で「真実はここにある!関東大震災真実の朝鮮人犠牲者慰霊祭」なる集会を16時30分から開催すると宣言。これに東京都が許可を出した可能性が高まっているのだ。