ようするに、吉村知事はビッグモーター批判に注目が集まっていることに丸乗りし、「街路樹は公共物」などと言行不一致な言葉で、人気取りとやってる感を演出しているだけなのだ。いつものやり口とはいえ、厚顔無恥としか言いようがない。
だいたい、大阪の府政にはいま、ビッグモーターなどより、もっと追及されるべき問題が山ほどある。その筆頭が、大阪・関西万博をめぐる問題だ。
まず、大阪万博をめぐっては、パビリオン建設の遅れが深刻化しているが、なんと、日本国際博覧会協会(万博協会)は、来年4月からはじまる時間外労働の上限規制を建設業界に適用しないよう政府に要請しているとメディアが報道。「いのち輝く未来社会のデザイン」をテーマに掲げておきながら、過労死や事故を招きかねない長時間労働を認めろと言い出したというのである。
それでなくても建設業務の時間外労働の上限規制は先送りにされてきたというのに、このような例外がまかり通れば法律が骨抜きになりかねず、到底許されるべきではない。当然、SNS上では怒りの声が広がっているが、そんななか、この問題を問われた吉村知事は、こう発言したのだ。
「万博の建設事業者側から、(上限規制を)除外してもらえないかという声が協会に届き、その声を政府に伝え、事務レベルでさまざまな課題の論点の一つとして議論していると報告を受けている」
まるで“万博協会の声を政府に伝えただけで、自分は関係ない”と主張するかのような言い草だが、吉村知事は万博協会の副会長(理事)でもある。だいたい、大阪万博の誘致委員会でも副会長を務め、これまでさんざん万博の開催を自分や維新の手柄としてアピールしてきたではないか。それを批判が高まると他人事のようなフリをするとは、無責任にもほどがある。この態度こそ、もっと批判されるべきではないのか。
しかも、ここにきて万博協会は、政府、大阪府・市、財界が3分の1ずつ負担することになっている万博の会場建設費の上限1850億円を、さらに増額させる検討に入ったという。それでなくても会場建設費は誘致段階では1250億円だったのがすでに1.5倍に膨れ上がっている上、つい先日まで吉村知事は「できるだけ1850億円の中でやるというのが今の予定で、今はその範囲に収まると聞いている」と言い張っていたのだ。
このままでは、東京五輪よろしく、すべてがなし崩しになって、またも血税が無駄遣いされるのは火を見るより明らかである大阪万博。吉村知事の無責任ぶりと合わせて、こうした問題こそマスコミは大きく報じるべきだろう。
(編集部)
最終更新:2023.07.30 03:31