首相官邸HPより
難民として危険から逃れてきた人たちを見殺しにする、そんな鬼畜のような法案が明日4月28日、衆院で採決されそうになっている。岸田政権が推進しようと躍起の入管難民改正案(以下、入管法改正案)だ。
そもそも、日本の難民認定率は2021年ではたったの0.7%(74人)で、イギリス63.4%(1万3703人)、カナダ62.1%(3万3801人)、ドイツ25.9%(3万8918人)、イタリア15.6%(6845人)といった他のG7の国と比較しても異常に低い状態にある。また、この国の入管行政は、在留資格を失った外国人に対し、難民申請中であることや個別の帰国できない事情などを一切考慮することなく強制送還の手続きをとるために全員を入管施設に収容するという「全件収容主義」をとっている。しかも収容にあたっては行政機関の判断のみで司法審査もなく、上限期限も設けない「無期限収容」という、おおよそ人道に反した内容になっている。このような日本政府の対応に対し、国連は再三に渡って改善を求める勧告をおこなってきた。
だが、この異常な難民認定率の低さや全件収容主義を見直そうとするでもなく、むしろ難民申請者をさらに危険に晒そうとするのが、今回の入管法改正案だ。
入管法改正案では、これまで難民認定の申請中は送還を停止してきた規定を見直し、難民申請を3回以上おこなった場合は強制送還できる規定を盛り込むなど、入管行政の権限をさらに強める内容となっている。菅政権下の2021年にも国会に提出されたが、保護すべき人々を命の危険や迫害の危機に晒す信じがたい内容であることから、作家や文化人、芸能人らをはじめとする多くの人たちが法案反対を表明。名古屋入管で亡くなったウィシュマ・サンダマリさんの問題や、菅内閣の支持率低下などもあり、このとき政府は衆院の段階で成立を断念し、廃案となった。
しかし、多くの反対の声を受けて廃案となった入管改正案を、岸田政権は問題点を改善することもなく、ほとんど変わらない内容で再提出。衆院法務委員会でおこなわれてきた審議では、立法事実にかかわる重要な統計さえ出そうとしないなど杜撰さが浮き彫りとなったのだが、与党は明日28日にも衆院法務委員会で採決に踏み切る構えだという。
いま日本に暮らす難民申請者には、すでに3回以上、難民申請をおこなっている人も多い。本来、難民として保護すべき対象の人々が、この入管法改正案の成立によって、命の危険が待っている国に強制送還させられる可能性が出てくる。比喩でも何でもなく、人を見殺しにしようという入管法改正案は、廃案の一択しかない。
しかも、多くの人に知ってほしいのは、この入管法改正案をめぐっては、法案自体の問題点もさることながら、政府・与党の非人道性、下劣さがあらわになっていることだ。