首相官邸HPより
岸田政権の暴走が止まらない。2月28日、衆院を通過し年度内の成立が決まった2023年度予算案では、防衛力強化のために前年より1.3倍増、過去最大の6兆8219億円もの防衛費を計上。さらに同日には、最長60年とされている原発運転期間の延長を可能にする「電気事業法改正案」を含むエネルギー関連の5つの法案を「束ね法案」としてまとめて閣議決定、国会に提出した。
防衛費倍増に敵基地攻撃能力の保有、次世代原発の新設など、安倍政権でもやれなかった重大政策を次々に推し進めようとする岸田政権──。しかも、問題は政策だけではない。最近の岸田文雄首相による発言は、もはや安倍晋三・元首相が乗り移ったかのような酷い発言が目立っているからだ。
わかりやすい例が、一連の同性婚をめぐる答弁だ。
岸田首相は、2月28日に同性カップルに公的な結婚を認めないことについて「不当な差別であるとは考えていない」と答弁。さらに、3月1日の参院予算委員会で、性的少数者への差別意識があるのではないかと問われると、「私は差別という感覚を持っているとは思っていない」と答弁した。
まったく何を言うか。性的少数者の権利を無視し、暗に差別を煽ってきた安倍元首相とは積極性の度合いが違うものの、岸田首相も総理大臣という立場では考えられないような差別肯定発言、差別を助長する言動をとってきたではないか。
あらためて指摘しておきたいが、更迭された荒井勝喜・前首相秘書官の「(同性愛者を)見るのも嫌だ。隣に住んでいたら嫌だ」発言で霞んでしまったものの、そもそも岸田首相による「(同性婚を認めると)社会が変わってしまう」という答弁自体、同性婚を認めることに負の問題があると考えているとしか受け取れない、差別を温存、肯定する発言だった。しかも、その後は「ネガティブな発言をしたつもりはない」などと安倍元首相を彷彿とさせる道理に合わない言い訳を繰り返し、答弁を撤回しようともしていない。
それどころか、「LGBTには生産性はない」発言の杉田水脈・衆院議員を総務政務官に据えるという安倍元首相でさえやらなかった信じられない人事をおこなったのは岸田首相だ。その上、杉田議員にきちんと謝罪させることもなく更迭することでお茶を濁したが、岸田首相は自民党の部会で「生物学上、LGBTは種の保存に背くもの」と発言したとされる簗和生・衆院議員をいまなお文科副大臣に据えたままで、辞任させていない。差別発言をおこなった人物を重用したばかりか問題を指摘されても辞任させないという態度は、差別を肯定・温存させる行為にほかならないではないか。
さらに言えば、岸田首相は、「同性愛は心の中の問題であり、先天的なものではなく後天的な精神の障害、または依存症です」などと書かれた冊子を自民党内の会合で配布したことで問題となった「神道政治連盟国会議員懇談会」の参加メンバーだ。実際、冊子の記述が問題となったあとの昨年11月30日時点のリストでも岸田首相は同懇談会の会員として記載されており、「神道政治連盟」のHPでは、「神道政治連盟」が応援する議員のひとりとして岸田首相の名前が記されている。
このような直球の差別団体から応援を受けておいて、よくもまあ岸田首相は「差別という感覚を持っていない」と言えたものだ。そしてこの厚顔無恥ぶり、安倍元首相にそっくりではないか。