無論、こうした歪な報道はテレビだけの問題ではなく、新聞も同様だ。
産経新聞や読売新聞が前のめりになっているのはもちろんだが、異常なのが日本経済新聞だ。今回の日米首脳会談や外務・防衛担当閣僚協議(2プラス2)についても〈日本が保有を決めた「反撃能力」の運用をめぐり日米が協力して対処する方針で一致したのは適切〉〈同盟関係は新時代に入り、日本は「自分の国は自分で守る」覚悟を問われる〉などと主張している日経だが、驚かされたのは、日経の政治部が運営している公式Twitterアカウント「日本経済新聞 政治・外交」の投稿だ。
昨年、安保3文書の改定を閣議決定した際、立憲民主党の泉健太代表が「容認できない」と声明を出したが、このニュースを日経の政治部長・吉野直也氏が取り上げたツイートに対し、政治部の公式アカウントはこう投稿したのだ。
〈国民の生命と財産が脅かされても被害が出るまで何もしないということでしょうか。旧民主党が政権を陥落したのは非現実的な安全保障政策が一因でした。〉
なんと、日経政治部の公式Twitterは、国会での議論もないまま先の戦争の反省から築かれた防衛政策をあっさり覆し、他国の領土を攻撃することを可能とする装備の導入を閣議決定で決めてしまった岸田政権の暴挙を指摘するでもなく、逆に野党からの批判を政権と一体化して非難してみせたのだ。しかも、政治部長がトスを上げて政治部アカウントがアタックするという阿吽の呼吸で、だ。
本サイトで報じたように、敵基地攻撃能力の保有などのための防衛費増額にかんして検討してきた「国力としての防衛力を総合的に考える有識者会議」には、山口寿一・読売新聞グループ本社社長兼日本テレビホールディングス取締役会議長や、喜多恒雄・日本経済新聞社顧問がメンバーとして参加。メディア現役幹部でありながら、岸田政権による「防衛費増額ありき」の議論を推進した当事者だ。その配下にある読売と日経の紙面がこのようになるのは当然かもしれないが、常軌を逸したツイートを見るかぎり、日経政治部はもはや大政翼賛会状態にあるとしか言いようがないだろう。
防衛費増額にかんしては、テレビも新聞も、世論調査の結果を盾にして「国民は防衛力強化を容認している」ことを前提とし、問題を防衛費の財源論に矮小化してきた。だが、読売新聞の世論調査では、防衛力強化のための防衛費増額について、12月2〜4日実施分では賛成51%・反対42%だったのが、最新の1月13〜15日実施分では賛成43%・反対49%となり、わずかながらも反対が逆転して上回ったのだ。このような状況でも、「国民は防衛力強化を容認している」などということを前提にした報道を、メディアは今後もつづけるつもりなのだろうか。
まるで戦争突入前の大衆扇動のような報道を垂れ流すメディア。岸田政権の暴挙に対してだけではなく、メディアの報道にも監視の目を光らせていかなくてはいけないだろう。
(編集部)
最終更新:2023.01.19 09:06