ようするに、電通と高橋容疑者は、電通が自分たちの利権の一部を高橋容疑者にわたし、高橋容疑者は政治力を使って電通の利益を膨らませるというかたちで、持ちつ持たれつの関係を続けてきたのである。
いや、それどころか、両者は最初からグルになって、お互いが利益貪り放題、不正やり放題になる仕組みをつくりだしてきた形跡がある。
東京五輪では、IOCが原則としてきた「スポンサーは1業種1社」が崩され、多くの企業がスポンサーに進出したが、「1業種1社」の撤廃を主導したのは高橋容疑者だった。
実際に高橋氏は2016年に受けた「週刊文春」(文藝春秋)のインタビューで、「五輪スポンサーは決まったカテゴリがあるけど、日本独特の企業があるじゃない。そういうところも『やりたい』というなら、やらせてあげようよ、と。今まで五輪をやったこともない、考えつかないような業種でもいいじゃないか、と。お金出してくれるんなら。それで電通にアドバイスしてどんどんやらせてる」と得意気に語っていた。
その結果、多くの企業が参入してきて、東京五輪過去最多となる3500億円超のスポンサー収入となり、電通は前述の手数料アップとあいまって、300億〜350億円もの手数料を得た。
実際、高橋氏は逮捕前、インタビューで堂々と「僕が口説いてスポンサーを集めたのに、一番もうけたのは電通。電通は手数料の何割かは僕に払うべきじゃないのか」などと口にしていた。
一方の電通は高橋氏のために、公正な入札を破壊した。前述したように、当初、都とJOCなどはスポンサーを「単純入札で選ぶ」としていたが、電通が「単純入札ではない方法で獲得する」との独自案を企て。結果的に単純入札でスポンサーが選ばれるケースは皆無に近かったという。
前出の読売新聞も〈入札が「骨抜き」にされた結果、スポンサー料の価格交渉が可能になり、電通で専務などを務めた高橋が懇意のスポンサーを組織委や電通につなぐ「仲介ビジネス」の余地が拡大した〉と指摘しているが、まさに電通が高橋容疑者とグルになって、今回の汚職事件の構造をつくりだしたと言っても過言ではない。
ところが、電通が汚職の温床となる構図をつくり出したことや法外な暴利を貪っていたことについて、大手メディアのほとんどが追及することさえしていない。それは、玉川徹氏の「電通」発言によって過大な処分を受けたことでも一目瞭然なように、電通がメディアにとって一大タブーであり、さらには新聞やテレビが五輪スポンサーとなったり、スポンサー広告などの恩恵を受けてきたからだ。
組織委前会長の森喜朗氏をめぐる疑惑をはじめ、いまだ解明にいたっていない東京五輪汚職問題。検察担当記者からは「特捜部の捜査は終結に向かっている」という説も聞かれるが、現状では膿はまだまだ残っているのは明らか。竹田、電通、森という“三大元凶”の徹底追及が必要だ。
(編集部)
最終更新:2022.10.26 08:01