いずれにしても、田崎氏の今回の「玉川さんの言うとおり」発言には“いまさら感”しかないのだが、もうひとつ問題なのは、田崎氏がこの期に及んでも、PCR検査の不備を厚労省のせいだけにして、安倍前首相や菅首相をかばっていたことだ。
田崎氏は、一向にPCR検査数が増えないことに批判が高まっていた昨年4月にも「厚労省の医系技官が医療行政を牛耳っている。大臣の言うことも、総理大臣の言うことをきかない人たちなんです」と説明していたが、今回も「厚労省にいくら言っても馬耳東風なんだ」と安倍首相が話していた、厚労省にいくら言ってもPCR検査の拡充に動かなかったとコメント。「厚労省が悪いのか、その先の保健所に問題があるのか、さらにその先に問題があるのか、わかりませんけども、いま、それが現実」などと解説していた。
たしかに、厚労省は一貫して検査拡充には消極的な姿勢をとってきた。政府関係者への聞き取りをおこなったシンクタンク「アジア・パシフィック・イニシアティブ」が昨年10月8日に公表した報告書によると、厚労省は昨年5月に「PCR検査で正確に判定できるのは陽性者が70%、陰性者は99%で、誤判定が出やすい」「陽性と誤判定された者が医療機関に殺到して医療崩壊の危険がある」などという内容の文書を作成。それを持って政府中枢に説明に回っていたことがわかっている。
1%の偽陽性者による医療機関の圧迫を恐れて70%の陽性者を見過ごすというバカげた主張だが、しかし、このバカげた説明に乗って検査を拡充させなかった安倍前首相や菅首相もまったくの同罪だ。政治のトップが指導力を発揮して、繰り返し検査がおこなえる検査体制と医療提供体制の整備を強化していたならば、ここまでの状況にはいたっていなかっただろう。
田崎氏は「厚労省が総理の言うことを聞かなかった」などと強調するが、何を言っているのか。安倍前首相は総理在任中、官僚に命じて、憲法や法律をひっくり返すような政策を強行し、おともだちへの利権分配を繰り返してきたではないか。菅首相も官房長官時代から、人事権を盾にして官僚を恐怖支配して、やりたい放題やってきた。それが、このPCR検査についてだけは、強権を発動できないなんてことが、あるわけがない。
ようするに、安倍首相も菅首相も、コロナ感染拡大防止について本気で取り組もうとしておらず、官僚任せにしていたのである。もっといえば、金のかかるPCR検査を拡充せずに済ませたいと考え、PCR不要論にすがろうとしていた。