そもそも、大阪での万博開催決定前の2014年におこなわれた立地調査では、候補地としてあがっていたのは花博記念公園鶴見緑地や万博記念公園といった万博跡地、関西国際空港に近いりんくう公園・りんくうタウンといった場所で、夢洲は交通アクセスの不備が指摘されていた。また、翌2015年7月には府や経済界などでつくる検討会が府内6カ所を候補地として選定したが、そこに夢洲は含まれていなかった。
ところが、2016年5月21日に当時大阪府知事だった松井一郎が菅義偉官房長官と東京都内で会談し、その場で「会場候補地は夢洲を軸に検討する」と方針を伝達(朝日新聞2016年5月23日)。同年7月22日に開かれた「2025年万博基本構想検討会議 第1回整備等部会」の議事録によると、事務局の担当者が「夢洲は、要は知事の試案ということで、知事の思いということで、この場所で出来ないかということでお示しをした場所でございます」と発言している。
つまり、大阪万博を夢洲で開催するというのは事実上、松井氏によるトップダウンの決定だったわけだが、松井氏が夢洲にこだわった理由、そして当時の菅官房長官にわざわざ報告をおこなったのは、夢洲がカジノ候補地だったからだ。
ようするに、大阪万博はカジノありきで進められてきたものであり、カジノだけでは税金投入に反対意見が出るため、万博という大義名分を使ってインフラ整備を図ろうという計画なのだ。
松井氏は「IR、カジノには一切税金は使わない」と断言していたが、それは大嘘で、万博を大義名分にして税金を投入しているにすぎない。そして、過去の万博跡地での開催であれば必要なかった莫大な金がかかるインフラ整備に税金が使われているのが実態なのだ。
しかも、夢洲駅周辺の整備に約30億円もの税金が投じられるのも、この「カジノありき」という姑息な計画の煽りを受けてのことだった。というのも、整備を担う事業者の公募に応募が一件もなかったのは、〈夢洲に誘致を目指すカジノを含む統合型リゾート(IR)の実現性が不透明なことが影響している〉(読売新聞8月31日付)ためだというからだ。
昨年5月に世界最大規模のカジノ運営会社である米ラスベガス・サンズが日本市場からの撤退宣言をおこなったように、カジノ業界はコロナの影響を大きく受け、万博以上にその経済効果には疑問符がついた状態になっている。そして、「カジノありき」の取らぬ狸の皮算用で万博計画を進めた結果、約30億円も追加で税金を投じなければならなくなってしまった、というわけなのだ。