しかも、事務費967億円がいかに無駄遣いであるかは、そのほかの生活困窮者対策の予算額を見れば明々白々だ。
たとえば、コロナ禍で「家賃が払えない」という人が増加し、若者のホームレス化も社会問題となっているが、対して今回の補正予算案で住居を失う恐れがある困窮者に対する「住居確保給付金」に充てられた予算額は100億円でしかない。本来、空き家対策などとリンクさせ国が主導するかたちで住居を借り上げて提供するなどの施策を急いでおこなうべき事態だというのに、である。
いや、もっと酷いのは、ひとり親家庭などに対応する「子どもの食事等支援」だ。岸田首相は衆院選前、野田聖子・少子化担当相とともに都内の「子ども食堂」を視察し、「想像以上に切実で厳しい現実を感じた」「行政との橋渡しをするNPOの皆さんを支援する取り組みを、政治としてまず考えていかなければいけない」などともっともらしく語っていたが、こうした取り組みに対する支援策として今回の補正予算で充てられたのは、わずか22億円。さらに、「子ども食堂」やフードバンク、孤独・孤立対策などといった支援をおこなう民間団体に対する活動助成事業も、充てられた予算額は4.7億円だ。
そもそも、こうして民間に丸投げしていること自体が、国として「子どもの貧困」問題に向き合っていない何よりの証拠だが、支援のための予算額もこの程度というのは、結局「子ども食堂」の視察も選挙前のパフォーマンスだったということ。挙げ句、クーポン配布に「未来応援給付」などと名付け、967億円を事務費に使おうとしていることを考えれば、岸田首相が現場の声などまるで聞いていないどころか、貶めていると言ってもいい。
無論、これらはほんの一例で、いまこそ拡充させるべき対策や、必要なのに支援策がそもそもない問題も山ほどある。にもかかわらず、967億円もの税金を「過大な水準ではない」などと言って誰にも歓迎されていないクーポン配布のための事務経費に投入しようというのは、どうみても異常であり、看過できるような話ではまったくない。
6日からはようやく臨時国会がはじまるが、この国民を舐めきった岸田政権の愚策を撤回させなければ、岸田首相の背後に張り付いている麻生太郎や安倍晋三といった弱者いじめの元凶たる亡霊たちをますます増長させることになるだろう。
(編集部)
最終更新:2021.12.04 09:21