だが、平井大臣の利益相反疑惑を打ち消そうとしていたこの報告書からは、逆に、疑惑を裏付けるような事実が読み取れる。
それは、前述したオリパラアプリの予算減額をめぐる記述だ。オリパラアプリについては当初、総額約73億円もの予算を計上していたが、この巨額予算に批判が高まると、6月1日になって平井大臣は費用を約38億円まで圧縮すると公表。前述したように平井大臣はNECなど各社に減額を要求し、ネクストスケープに再委託していたJBS も事業費を約14億円から約8億円まで減額されていた。
今回の報告書では、ネクストスケープもまた、費用圧縮にともなう契約の変更で予算を減額されたとして、こう書いている。
〈JBS からネクストスケープに対する再委託に関しても契約の変更が行われ、令和3年7 月8日付けで委託料が2億2000万円(税込)に減額された。〉
しかし、問題はこの7月8日という日付だ。平井大臣と豆蔵HDの関係を報じてきた「週刊文春」は7月8日発売号で、JBSの再委託先であるネクストスケープの請け負い額は当初と変わらず6億6000万円のままだと報道。このことから、平井大臣の息がかかった企業であるため優遇を受けているのではないかと疑惑を深めていた。
つまり、「週刊文春」が平井大臣と豆蔵HDおよびネクストスケープの関係について報じ、ネクストスケープだけが減額されていないと追及したのと同じ日に、ネクストスケープの請け負い額が大幅に減額されていたのだ。これは明らかに平井大臣の利益相反疑惑を打ち消すために、慌てて減額するようJBSに働きかけがおこなわれたとしか考えられないだろう。
にもかかわらず、報告書では平井大臣の利益相反疑惑は深く追及されることもなく、神成氏とネクストスケープ社長の関係だけがクローズアップされているのだ。
これはどうみても、平井大臣が牛耳る内閣官房IT総合戦略室がお手盛りの調査をおこなって、平井大臣の疑惑打ち消しのために、神成氏をスケープゴートに仕立てたとしか考えられない。
しかも、唖然とするのは、そんな疑惑真っ黒な人物が、平然と初代大臣としてデジタル庁のトップに立ったということだ。菅首相は選挙狙いの内閣改造を予定しているらしいが、永田町情報では、平井大臣はそのまま留任するという見方も流れている。
いずれにしても、デジタル庁はこのまま、自民党政権の利益誘導の温床になっていくのは間違いない。
(田部祥太)
最終更新:2021.09.01 08:57