しかも、平井大臣はたまたま豆蔵HDの株式を購入していたのではなく、平井大臣と同社の荻原紀男社長はもともと親密な関係にあった。実際、豆蔵HDは平井氏が代表を務める自民党香川県第一選挙区支部に対して2013年から2017年までのあいだに計300万円も献金。また、荻原社長が会長を務める政治団体「デジタル社会推進政治連盟」も、平井氏の政治資金パーティで100万円分ものパーティ券を購入していた。さらに「週刊文春」(文藝春秋)によると、荻原社長は平井大臣のファミリー企業の監査役も務めているという。
そして、平井氏はIT政策担当の内閣府政務官を務めていた2006年、この豆蔵HDの株を購入。大臣規範では、大臣、副大臣、政務官は在任中の株取引自粛が求められているが、これはその大臣規範に違反しているというだけではない。国のIT政策の方向性などを事前に知る立場にある政務官が、自分とべったりのIT企業の株を購入するというのは、その企業に情報を事前に流したり、利益相反的な動きをすることも疑われるありえない行為だ。
また、豆蔵HDは平井大臣が株を購入した4カ月後に持ち株会社に移行し、事業を急拡大。その後も会社の規模を大きくし、2020年1月から3月にかけてMBO(経営陣による自社株買い)をおこなって、平井氏の保有株を買い取った。そして、このMBOで、平井大臣は少なくとも1200万円の売却益を得たのである。両者の関係や経緯を見たら、MBOによる売却益は「ヤミ献金」の可能性さえ考えられるくらいの真っ黒なものと言っていいだろう。
ようするに、平井大臣と豆蔵HDの荻原社長はまさしくズブズブの関係にあったわけだが、じつは荻原社長はネクストスケープの取締役も兼任。つまり、オリパラアプリを受注し、とりわけ特別扱いを受けてきたのは、平井大臣のタニマチの会社だったのである。利益相反が疑われるべきは神成氏だけではなく、平井大臣も同様なのだ。
ところが報告書では、ネクストスケープがオリパラアプリの再委託先となっていることを平井大臣が知ったのは本契約から4カ月後、荻原社長が再委託の事実を知ったのも再委託を受けた約1カ月後であることを理由に、「本システム開発にネクストスケープが再委託業者として参画したことについて、平井大臣と豆蔵HD、荻原社長の関係が影響を及ぼしていたものとは認められない」(注:報告書では豆蔵HDおよび荻原氏は匿名)とまとめているのである。