さらに、都は今月中に中等症の患者を対象にした病床を80床整備するとしているが、当然ながらこれも80床ではまったく追いつかない状況にある。そんななか、多くの人がその必要性を訴えているのが“野戦病院”のような臨時の大規模医療施設だ。
その意見はネット上だけではなく、日本医師会の中川俊男会長も18日に「民間が所有するのも含めて大規模イベント会場、体育館、ドーム型の運動施設などを、改正特措法に基づく臨時の医療施設として集中的に医療を提供する場所を確保することを提案します」と発言。このとき中川会長は利用施設の一例として、東京・有明にある東京ビッグサイトを挙げた。
福井県は体育館に100床を設けて臨時施設として活用する方針だが、〈施設内の全体が見渡せるため、宿泊療養施設よりも少ない医療従事者で対応が可能〉(読売新聞14日付)だという。自宅死を即急に食い止める必要に迫られている東京都こそ、この大規模医療施設の設置を真っ先に進めるべきだが、しかし、都は検討さえしていないというのだ。
実際、毎日新聞の取材に対し、東京都福祉保健局は「今ある医療資源を最大限使うことがまず先決で、(臨時に病床を増やすことに)取り組む必要はないと考えている。海外の事例を収集したことはあるが、具体的に検討したことはない」と回答(14日付)。日刊ゲンダイの取材に対しても、都の感染症対策部が「医療資源があるのに、わざわざ、医療的に環境の悪い体育館に臨時病床をつくる必要性はない。検討する予定もありません」と答えている(19日付)。
この状況下で「医療資源がある」などとよく言い張れたものだが、これはようするに、パラリンピックを開催している都市に野戦病院があるという異常な状況を見せたくないだけではないのか。