しかも、読売や時事通信にいたっては、広島や長崎の平和祈念式典で挨拶文を読み飛ばしたり遅刻した件までも、自民党内の「相当疲れているのだろう」「点滴でもして1日ゆっくりした方がいい」などというコメントを使って、あたかも“疲労のせい”にしようとしていた。
もはやアホか、としか言いようがない。とくに広島では挨拶文の読み飛ばしを「原稿がのりでくっついて剥がれなかった」などと噴飯ものの言い訳をしたが、菅首相は「原爆」を「原発」と読み間違えただけでなく、もっとも重要な「核兵器のない世界の実現」という部分をも読み飛ばした上、日本語として意味不明の挨拶を平然と読み上げるという無神経ぶりを見せつけた。それを「のり」だけではなく、メディア側が「疲れているせい」などと片付けようとするのである。
無論、これは菅官邸が仕掛けた「同情作戦」であることは明白だろう。実際、昨年の夏も、コロナ対策の無為無策が批判されていた当時の安倍晋三首相をめぐって、安倍応援団メディアやネトウヨたちから「147日も『公務なし』の休日がない!」「働きすぎ!」などという声があふれた。
これにあやかり、菅官邸もコロナ対策の失敗や広島・長崎での失態を覆い隠すために、「菅首相は疲れている」「やつれた」などと強調しようと必死なのだろう。
この非常事態に臨時国会も開かず、さらには国内で1日の新規感染者数が2万人を超えても会見のひとつも開かないという怠慢な態度をとる総理大臣に対し、徹底して責任を追及しなければならない。そんな重要な時期に、官邸の誘導に乗っかって「相当疲れている」などと片棒担ぎをするメディア……。五輪報道しかり、メディアがこの体たらくだからこそ、能無しのコロナ指揮官は一向に反省しないのだろう。
(野尻民夫)
最終更新:2021.08.14 05:31