たしかに、組織委のマスコミ向け発表資料には、〈ドラゴンクエスト「序曲:ロトのテーマ」〉とゲーム名と曲名があっただけで、すぎやまの名前は一切書かれていなかったようだ。日刊スポーツなど複数のメディアが入場行進曲の「使用曲一覧」を紹介しているが、そこにもすぎやま氏の名前はない。
ただし、この扱いはすぎやま氏だけではなかった。入場行進で使用されたゲーム音楽については、すべて作曲家の名前が入っていなかった。
これについて、ゲーム音楽の場合、著作権が作曲家個人でなく、ゲームの発売元の会社にあるケースが多いからではないかという指摘もある。
実際、同じく入場行進に採用された『エースコンバット』の楽曲『First Flight』を作曲した小林啓樹氏が、開会式中に〈あれっ!? 俺の曲がオリンピックで流れてる(笑)〉とツイート。無断使用を心配するユーザーに、〈社員として作った成果物ですから、全ての権利は会社にあります〉と説明していた。
しかし、仮に著作権が会社にあっても、それぞれの曲には作曲者や制作者がいるのだから、メディア向け資料にクレジットくらい入れるのが常識だろう。ましてや、国際社会ではコンテンツの制作にかかわった個人へのリスペクトが強く求められる。実際、世界的なゲームの賞の音楽部門などでは、作曲者個人に与えられる。佐久間氏が指摘するように、「イマジン」と、オノ・ヨーコとジョン・レノンの説明に2ページ費やしていることと比べると、あまりに不自然だ。
そうしたことから、この作曲家のクレジットなしというのが「すぎやまこういち」隠しではないかとの疑念の声が上がっている。すぎやま氏の名前が海外メディアの目に触れ、これまでの歴史修正発言や差別発言を問題になることを恐れて、入場行進時のゲーム音楽はすべての楽曲の作曲家名を伏せることにしたのではないかというのである。
自分たちのでたらめなやり方をウソとインチキでごまかしてきた五輪組織委ならやりかねないが、実際、それが理由だとしたら、その姑息ぶりには呆れるしかない。