しかし、「バブル方式」が完全に破綻している証拠はこれだけではない。大会関係者に対しては、入国後14日以内でも宿泊施設や関連施設で食事ができない場合、公共交通機関を使わずに行ける範囲でのコンビニやレストランのテイクアウト利用、飲食店の個室利用を認める特例を設けている。この特例措置をめぐっては、五輪貴族たるIOC委員たちに高級レストランの利用を認めるために設けられたのではないかと疑惑の目が向けられてきたが、一方、政府や組織委は「監督者等による帯同やGPSを活用した行動管理をおこなう」と説明してきた。
だが、じつはこのルールもあっさり破られていた。前述の『おはよう日本』では、大会関係者を受け入れている品川区のホテルを取材。このホテルには大会期間中、関係者を含めて最大400人以上が宿泊するといい、ロビーには組織委から派遣された警備員が「監督者」として常駐していた。しかし、そこでおこなわれていたのは大会関係者の外出チェックのみで、帯同はおこなわれていなかったのだ。
しかも、その外出チェックというのも「自己申告」にすぎず、当の警備員は「声をかけること自体がないので、聞かれたことに対して答えるだけ」と回答。ホテルの支配人も「フロントに声をかけないままサーっと出ていかれた場合は、我々は止めることはできない」と口にしていた。つまり、外出先はどこかも告げないまま、宿泊先の外を自由に動き回ることが事実上可能になっているのだ。
現に、そのことを証明するような「事件」も起こっている。警視庁麻布署は昨日、東京五輪のスタッフとして来日していたアメリカとイギリス国籍の男性4人がコカインを使用したマ薬取締法違反の疑いで逮捕したと発表。発表によると、3日未明に容疑者のひとりが酒に酔った状態で都内のマンションに侵入し、警官から職務質問。尿の鑑定でコカインの陽性反応が出たことで逮捕となったが、職務質問の前日には六本木のバーで飲酒していたという。
逮捕容疑のコカイン使用が事実かどうかはともかく、問題なのはここでも「プレイブック」のルールは破られていた、ということ。逮捕された4人は入国から14日以上経っているというが、「プレイブック」では入国後15日目以降も食事の場所は原則、大会会場の食事施設や宿泊先内レストラン、自室内でのルームサービスやデリバリーに限定している。だが、実際にはバブルの外の関係者がバーに繰り出していたのである。しかも、薬物使用疑惑による逮捕がなければ、その事実が明るみに出ることはなかっただろう。