呼びかけ人のひとりである上野千鶴子は、朝日新聞のインタビューで、このタイミングで署名を始めた理由についてこう語っている。
「五輪に対しては、もう何を言っても仕方ないよねという無力感がはびこっている。その気持ちをなんとかしたいと思ったからです。
これはメディアの責任もすごく大きいと思います。世論調査でも、質問が「開催か中止か」から、いつの間にか開催ありきになり、『観客を入れるべきかどうか』に変わってきている。その二択しか与えられず、既定の路線にみんな乗せられる。」
「開催ありきの議論に『ちょっと待った』をかけて、前提を「五輪を開催するかどうか」に戻すために、署名を始めました。」
「歴史を振り返ると、太平洋戦争へと突き進んでいった旧日本軍と似ている」
「それでも、開戦前夜であっても、ちゃんとNOを言う人がいた、開戦後であってもNOを言い続ける人がいたということを、今回の五輪では署名という形で、歴史の痕跡として残しておく必要があると思いました。
だから、今さら何をというより、今だからこそです。『あの五輪、なんで止められなかったの』って将来世代から言われた時に、顔向けできないじゃないですか。」
宇都宮弁護士が呼びかけた五輪中止を求める署名をめぐっては、「開示クラスタ」のWADA氏の開示請求によって、東京都が無視し放置していたことがわかったが、しかし、こうした動きが次々出てきて、世界的に認知されていけば、マスコミも都も、そして菅政権も無視することはできなくなるはずだ。
政府やマスコミの「開催ありきの議論」に乗せられることなく、私たちは最後の最後までしつこく、開催中止を求める声を上げていく必要がある。
(編集部)
最終更新:2021.07.05 10:16