しかし、これ、国民がほんとうに「無観客で開催」を求めているわけではないだろう。そもそも6月の読売新聞の調査では、「延期」という選択肢を消して、「中止」にためらいのある人は全員「開催する」に誘導する仕掛けをしていたし、JNNの調査についても、質問文で「1万人を上限とし観客を入れて開催する方針ですが」と前置きし、「開催を止めることはもうできない」とあきらめた国民を、「やるなら無観客で」と誘導しているにすぎない。
実際、フラットに選択肢を並べた朝日新聞の6月19〜20日の調査では、再延期が30%で、中止が32%。合わせて6割以上が開催に反対していた。
また、都議選での自民党の議席が予想より20議席近く少ない33議席にとどまったのも、五輪開催強行に対する怒りが大きく影響しているのは間違いないだろう。
にもかかわらず、ほとんどの新聞やテレビは五輪中止に言及することをやめてしまった。いまだ、中止論を主張しているのは、テレビでは『バイキングMORE』(フジテレビ)、新聞では「東京新聞」くらいかもしれない。
しかし、希望はある。ネットではここにきて、再び開催中止を求める声が大きくなっているからだ。
すでに、元日弁連会長の宇都宮健児弁護士が呼びかけた「人々の命と暮らしを守るために、東京五輪の開催中止を求めます」の署名は、44万筆を突破。50万人に到達しようとしているが、さらにここにきて、哲学者の内田樹氏や社会学者の上野千鶴子氏らが新たに五輪中止を求める署名活動を開始した。
声明文で「『スーパー感染拡大イベント』にならないようにすることはほぼ不可能」として、「歴史的暴挙ともいうべき東京五輪が中止されることを求める」と謳ったこの署名は、以下の13人の作家が呼びかけている。
浅倉むつ子(法学者)、飯村豊(元外交官)、上野千鶴子(社会学者)、内田樹(哲学者)、大沢真理(東大名誉教授)、落合恵子(作家)、三枝成彰(作曲家)、佐藤学(東大名誉教授)、沢地久枝(ノンフィクション作家)、田中優子(法政大前総長)、春名幹男(ジャーナリスト)、樋口恵子(評論家)、深野紀之(著述家)