それにしても、なぜナベプロの「お偉いさん」は、担当職員が震え上がるほどに激怒したのか。
イモトは辞退したことでバッシングを受けたり炎上したりしたわけでもなく、むしろ感染拡大防止への配慮に賞賛の声が上がっていたくらい。それをわざわざ、「県から辞退を要請した」と虚偽の説明までさせるべく圧力をかけた理由はなんなのか。
その背景として、考えられるのがナベプロの東京五輪への異常なまでの肩入れだ。
実際、2019年12月に聖火ランナーが発表された際も、多数の芸能人のなかでも、政権べったりの吉本興業の芸人たちと並んで目立っていたのが、ナベプロ所属の芸能人の多さだ。群馬県で選ばれた中山秀征、東京都で選ばれた中川翔子、広島県で選ばれたアンガールズ・田中卓志、鹿児島県で選ばれた恵俊彰……。
しかも、聖火リレーの中止論が取り沙汰されたりランナー辞退者が続出するなかでも、『ひるおび!』(TBS)でMCを務める恵俊彰や、『バイキングMORE』(フジテレビ)の曜日レギュラーである田中卓志は、自分は辞退しないとわざわざ言及していた。
田中は結局、緊急事態宣言が延長となったため辞退することになったが、恵は故郷・鹿児島での聖火ランナーを強行している。
恵が聖火ランナーを務めたのは、4月28日のことで、すでに東京では緊急事態宣言が出ており、都外への移動自粛が呼びかけられていた。また聖火ランナーは、感染対策として、走る2週間前から会食や人手の多い場所への外出を避けるよう求められていたが、恵は同日の『ひるおび』午前中いっぱいまで出演し、鹿児島に向かったのだ。
ちなみに恵が聖火ランナーを行なった鹿児島県では、市は違うが、聖火リレーの交通整理を担当していた職員ら6名が感染するクラスターが発生している。このクラスターと恵らの鹿児島入りに因果関係があるとは思わないが、感染が拡大している都市圏から何人も人が動けば、その地方に感染が拡大するリスクがあることは、現在の北海道や沖縄の感染状況を見ても明らかだ。
緊急事態宣言の最中、明日からGWが始まるというときに、お昼の帯番組の司会者が番組途中で聖火リレーのために地方へ旅立つというのは、視聴者に対して都市圏から地方に旅行していいんだという誤ったメッセージにもつながる。
情報を扱うワイドショー司会者の行動とは思えないが、逆に言うと、それくらい、ナベプロは五輪に肩入れしていたのである。