ところが、こうした危険性の高まりも、五輪開催に突き進む関係者たちは真っ向から無視。なんと、ライブ会場の拠点である代々木公園では、6月1日からは会場設営工事を強行するのだという。
代々木公園で6月1日から工事がはじまるライブサイト会場の予定地は、すでにネットやロープで囲まれ、立ち入り禁止となっている。これは政府の緊急事態宣言と都の緊急事態措置を受けて4月25日から当該エリアを閉鎖しているためだが、昨年や今年はじめの緊急事態宣言発令時にはこのような措置はとられていなかった。また、当該エリアには広場があるため外飲み対策として広場を立ち入り禁止しているようにも思えるが、代々木公園内に外飲みできるエリアはほかにもある。つまり、緊急事態宣言にかこつけて、ライブサイト会場の工事に入る前から閉鎖した可能性もあるのだ。
しかも、いまもっとも批判を集めているのは、その工事内容だ。ライブサイト会場の工事の準備のため、すでに4メートル以下あるいは8メートル以下の木の剪定がはじまっているからだ。
この状況下でパブリックビューイングを実施するということだけでも絶句なのに、そのために都内でも数少ない自然豊かな市民の憩いの場である公園の緑をなくそうとするとは──。しかも、入札情報を確認したところ、この代々木公園のライブサイトの実施運営業務は電通が落札している。
ちなみに、東京都の2021年度予算案の概要によると、「ライブサイトの感染対策」に8億円、「ライブサイトを中⼼とした祝祭空間の創出(オリンピック)」に47億円、「区市町村が実施するコミュニティライブサイトやシティドレッシング等に対して⽀援」に21億円を計上。一部シティドレッシング等も含まれているが、ライブサイト関連で76億円もの予算が組まれている。
このうちどれくらいの金額が電通に渡っているかは、東京都が直近半年間に決定した分の落札価格しか公開していないためはっきりしないが、ライブサイト運営業務の電通の落札価格は少なくとも十億円以上にのぼるのではないかと言われている。
この金額、そしてこの間の五輪組織委と電通の癒着を見ていると、今回のライブサイト強行も、電通に儲けさせるためとしか思えなくなってくる。
いずれにしても、このままでは、緊急事態宣言下の感染拡大期に、都内の公園などで電通が取り仕切るパブリックビューイングなどのお祭りイベントが強行され、その代わりに貴重な緑が減らされてしまう。
そして、このパブリックビューイングは東京都だけで実施するのではない。北海道、岩手、宮城、福島、神奈川、熊本まで全国津々浦々で実施される予定で、北海道などはやはり電通北海道が企画運営を落札している。
狂っているとしか思えないが、しかし、これは紛れもない現実だ。いま、ネット署名サイトでは「代々木公園の自然を破壊する、東京五輪2020ライブサイト計画の中止を求めます」という署名が開始され、本日19時現在、1万7000人を超える賛同が寄せられている。当然、東京都は6月1日からの工事を中止すべきだが、それ以上に、犠牲者が出ることも厭わず五輪強行開催に突き進もうという菅政権やIOCに「ふざけるな!」と声をあげなくてはならない。
(編集部)
最終更新:2021.05.25 12:03