しかも、さらに信じられないことに、与党側は緊急事態宣言の発出が決定された4月23日、この法案の衆院厚労委員会での強行採決を目論んでいた。しかし、同日朝に厚労委員会の筆頭理事である菅原一秀・前経産相が有権者に現金を配布していた疑いで東京地検特捜部から任意の事情聴取を受けていたことが報じられ、筆頭理事を辞任。そのことによって法案の強行採決は見送られたのだ。
菅政権がコロナ対策の議論を放り出して医療費引き上げの審議を優先させていること自体が常軌を逸しているのに、緊急事態宣言の発出を決定する日にどさくさ紛れの強行採決を狙い、その強行採決が見送られた理由が「筆頭理事の有権者買収疑惑」とは、まさしく菅政権がいかに腐りきっているのかを物語るような話だ。
当然、こんな法案はとっとと取り下げ、コロナ対策の議論をおこなうべきだが、与党側はこの「医療費2倍法案」を明日にも委員会で強行採決に踏み切るのではないかとみられているのである。
しかも、この法案、どさくさ紛れの強行採決など絶対に許すわけにはいかない危険な内容なのだ。
そもそも、この法案について菅義偉首相は「現役世代の負担上昇を抑え、すべての世代が安心できる社会保障制度の構築は待ったなしの課題。能力に応じた負担をしていただくことが必要だ」などと述べているが、医療費の引き上げによって受診控えが起これば、当然、病状が悪化し手遅れになる危険が高まる。実際、政府試算でも、「膝の痛み」の外来では年3万2000円、関節症と高血圧性疾患で通院する場合は年6万1000円も負担が増すという(しんぶん赤旗4月9日付)。
その上、菅首相はあたかも現役世代の負担が減るかのような言い草だが、現役世代の負担が減る額は年間720億円。これを1人あたりに換算すると「年間700円、1日あたり2円」でしかない。むしろ、もっとも削減されるのは国と自治体の公費980億円であり、現役世代の負担減は口実でしかないのだ。