この期に及んでも、府民の命を守るための重要な仕事を放り出してテレビに出て自己アピールし、自分のパフォーマンスのために確約もとれていないのに「滋賀県のみなさんに感謝」などと口にする……。まったく絶句するほかないだろう。
しかも、こうして吉村知事がパフォーマンスにばかり躍起になっているあいだにも、大阪の状況はどんどん悪化するばかり。実際、現在は重症病床が足りないために重症者が軽症・中等症病床で治療を受けており、軽症・中等床の病床も逼迫。自宅療養者と入院・宿泊療養を待っている人の数が約1万2000人にものぼっているほか、3月以降、自宅で死亡した人が8人おり、そのうち自宅療養中が5人、療養用ホテルに向かう前だったのが2人、1人は療養先を調整中に死亡したという。
いや、背筋が凍るのは、入院治療もホテル療養も受けられず自宅待機を余儀なくされた人が、急変しても救急搬送で病院に運ばれることさえかなわないという実態が次々に明らかになっていることだ。
たとえば、本日22日放送の『羽鳥慎一モーニングショー』(テレビ朝日)で紹介された大阪府在住60代男性・Aさんのケース。A さんは糖尿病の基礎疾患とがんの治療中で、コロナ陽性だと確認されて医師からは「入院が必要」という診断を受けた。だが、保健所からは「入院先が見つからないのでしばらく自宅待機してほしい」と言われ、そのまま3日以上が経過。今週月曜には39℃の高熱が出て、さらにパルスオキシメーターで酸素飽和度を測定すると、その数字は90。90以下になると十分な酸素を臓器に運べないとされており、すぐに救急車を呼んだのだが、ところが「入院できる病院がないため運べない」と言われ、救急隊員は酸素吸入などをして帰ってしまったという。
あきらかに危険な容態であるにもかかわらず、緊急搬送さえしてもらえない──。兵庫県に住むAさんの娘は、父が病院に運んでもらえなかったことを知ると保健所などに連絡、6時間以上経ったあと「府のフォローアップセンターから連絡があり入院できる病院が見つかりました」と報告を受けたが、しかし、そこで突きつけられた「入院の条件」は、「酸素吸入はできるが、人工呼吸器など(重症時の)対応はできない。ご了承いただけますか」というものだったという。
これはつまり、入院先で重症化して人工呼吸器などによる治療が必要になってもそれを受けられないという「命の選択」にほかならない。しかも、この条件をのまなければ、自宅で療養するしかない。結局、Aさんはこの条件を受け入れて入院を選択、そこで中等症の肺炎と診断され、いまはステロイド投与を受けて容体は安定しているというが、Aさんやその家族の不安を思うといたたまれない。