首相官邸HPより
国内の感染拡大状況を無視し、鳴り物入りで初の日米首脳会談のために訪米した菅義偉首相。ワクチン接種が進むアメリカはいざ知らず、日本はワクチン接種がまったく進まないだけでなく一刻も早く緊急事態宣言を出さなければならないような状況にある。そんななかでコロナ対応を放り出して訪米するなど、無責任の極みだ。
にもかかわらず、菅首相が国内の感染状況も顧みず訪米したのは、日米首脳会談で支持率アップを見込んでのこと。実際、メディアは「バイデン大統領が初めて直接会って会談する外国首脳」「バイデン大統領と菅首相は同じ苦労人、叩き上げ、スイーツ好き」などと盛んに強調し、初の訪米を盛り上げていた。
しかし、バイデン大統領の眼中にあるのは「対中政策」であって、初会談の相手に菅首相を選んだのも「中国の周辺国で米と同盟関係にあるから」という理由にすぎない。実際、蓋を開けてみても、会談内容にサプライズはなし。産経新聞は、会談の日程が延期された際、〈日本側は日米両国の結束を内外に誇示するためにも会談だけではなく、晩餐会などの日程を組むよう要望しており、その分、感染防止対策の準備に時間がかかった事情がある〉(4月2日付)などと伝えていたが、その晩餐会は開かれることもなく、バイデン大統領は会談が終わると週末を過ごすために地元デラウェア州ウィルミントンの自宅に帰ってしまった。
さらに、米国内のメディアのほうも、8人が死亡したインディアナ州の物流大手フェデックスの施設で起こった銃乱射事件を大きく取り上げており、日本とは違って首脳会談の話題はそれほど注目を集めていない。
「外国首脳として初の会談!」などと盛り上がっているのは日本だけという、井の中の蛙ぶり──。いや、それだけならまだしも、菅首相は信じられないような醜態を晒した。よりにもよって会談後の共同記者会見という国際舞台で、菅首相は記者の質問をスルーするという愚行を働いたのだ。
共同会見では最初にそれぞれが発言をおこない、そのなかで菅首相は「今年の夏、世界の団結の象徴として、東京オリンピック・パラリンピック競技大会の開催を実現する決意であることをお伝えしました。バイデン大統領からは、この決意に対する支持をあらためて表明をしていただきました」と発言。一方、バイデン大統領からは東京五輪について言及はまったくなかった。
これだけでも温度差が感じられるものだったのだが、この冒頭発言のあとは記者からの質疑応答に。最初にバイデン大統領が指名した米AP通信の記者は銃乱射事件に関連し銃規制の問題を質問。これにバイデン大統領が応答したあと、つづいて菅首相は産経新聞の記者を指名し、産経の記者は「G7のなかで日本だけが対中制裁をおこなっていない。こうした点にバイデン大統領から理解を得られたのか」と菅首相に尋ねた。
この質問に、菅首相は目線を下にやりながら回答。ようするに、事前に記者がどんな質問をするのかを把握し、原稿を用意していたというわけだ。安倍晋三・前首相もそうだったが、日米首脳が揃った共同会見の質疑応答でさえ原稿を読み上げるとは恥晒しもいいところだが、それはともかく、問題は、次にバイデン大統領が指名した英ロイターの記者の質問のときだった。