竹田氏の自国優越思想や中国・韓国ヘイトを認めたばかりか、慰安婦攻撃と韓国差別が絡み合っている構造、そして「差別ではなく批判」というエクスキューズの欺瞞にまで踏み込む判決──。山崎氏は判決直後の会見で、「社会にはびこる民族差別に反論できるアクションになった」と語っていたが、ほんとうに意義深い判決だったといっていいだろう。
しかし、一方で忘れてはいけないのは、この訴訟じたいが、本来、あってならない批判封じ込めのためのスラップ訴訟だったということだ。
そもそも、この裁判は、問題の講演会の中止が発表された後、竹田氏が山崎氏に対して〈【訴訟予告】山崎雅弘殿 本日24時までに、私の名誉を毀損する記事を投稿したことにつきTwitterで謝罪し、該当する箇所を全て削除してください。これが実行されない場合は名誉毀損の訴訟を提起します。〉(2019年11月17日)と訴訟をちらつかせることで、山崎氏の批判を封じようとしたことから始まっている。
さらに山崎氏のみならず、山崎氏の当該ツイートをリツイートした内田樹氏や東京新聞の望月衣塑子記者に対しても、同様にリツイート解除や謝罪をしなければ訴訟を提起するとちらつかせて恫喝していた。
山崎氏は「竹田氏に関する私の言論は、客観的事実に基づく正当なもの」として、竹田氏の恫喝に屈することなく裁判で見事勝訴を勝ち取ったが、誰にでもできることではないだろう。
実際、竹田氏が差別的発言、自国優越思想をもっていることは、その著書やツイート、発言からわかる客観的事実だが、こんな当たり前のことを立証するために、山崎氏側は膨大なコストをかけさせられた。判決では裁判費用は竹田氏が負担することになったが、仕事に当てられたはずの膨大な時間を、証拠集めや陳述書に費やさなければならなかった。
金を持っていれば勝敗度外視でいくらでも裁判を起こすことができ、裁判をちらつかせるだけで、金を持たない者の口をつぐませることができる。山崎氏の裁判を支援してきた内田樹氏は判決後の会見で「今回の判決によってスラップ訴訟に一定の歯止めがかかるのではないか」と語っていたように、金の力で批判を封じるようなスラップ訴訟をこれ以上許してはならない。
しかも、今回の裁判の当事者である竹田氏は結局、あんな判決文をもらいながら、控訴という手段に出たため、裁判はまだ続くことになる
山崎氏は、もし控訴審で判決が覆るようなことがあったら「「日本は差別的言動をする者を『差別主義者』と呼んで根拠と共に批判する人間が罰せられる国」「社会から差別をなくす努力を放棄した国」ということになってしまう」とコメントしているが、その通りだ。ひき続き、裁判の行方に注視したい。
(編集部)
最終更新:2021.03.14 09:56