看護師不足を抜本的な処遇改善ではなく、むしろ処遇を悪化させかねない規制緩和で穴埋めしようとする新自由主義丸出しの発想。新型コロナによって「ケア労働」の重要性を目の前に突きつけられても、まだ使い捨てでどうにかなると考えているのだから、あきれるほかはない。
しかも、問題はそれが女性に対する差別に基づいた構造的な問題だと指摘されても、一切耳を貸さないという事実だ。森発言によって世界から日本の性差別がこれほど注視されていても、菅首相はその根本的な問題に取り合おうとしない、いや理解しようとすらしていないのである。
しかし、それも当然かもしれない。男女共同参画担当大臣に任命した丸川珠代氏が選択的夫婦別姓に反対する自民党議員有志の文書に署名していた問題でも、菅首相は「いち政治家として、こうした活動をすることはおかしくはない」などと言い張った。そもそも、菅首相は過去に選択的夫婦別姓の推進を求めていたひとりだったが、総理大臣という立場になっても制度導入を積極的に進めようとせず、丸川大臣の資質を疑わない態度からもわかるように、結局は女性が置かれている社会的状況について真剣に考えたことなどないのだ。
女性差別全開の極右思想の持ち主だった安倍晋三がようやく退陣し、女性の問題について大きな政策転換をおこなうチャンスだというのに、何をすべきかさえ理解しない菅首相。いや、女性の足を引っ張る「害悪」という意味では、安倍前首相と菅首相に大差はないのである。
(水井多賀子)
最終更新:2021.03.07 10:01