もっとも、追い詰められた菅首相に起きているのはこうした“醜悪な本音のダダ漏れ”だけではない。その場の勢いでことを口走り、あとになってその責任を取らずに頬被りしてしまうということも起きている。
菅首相は1月29日、立憲民主党の川内博史衆院議員からの要望を聞き入れ、ひとり親や非正規労働者ら6人と面会。〈休業支援の対象とならない大企業の非正規労働者を支援対象にする〉ことや〈低所得の子育て世帯に子どもの入学や進級に備えた給付金を支給すること〉が直接要望されると、「対応を検討していく」「この私が話を聞いたんだから」と明言した。
「この私が話を聞いたんだから」という発言自体、傲慢さがプンプン匂う、プチ鹿島が命名した「権力快感おじさん」らしい言葉だったが、それでも面会をおこなったことや支援を約束したことは重要だ。そう本サイトも考えていたが、ところが菅政権は大企業の非正規雇用にも休業支援金の対象を拡大するとしたものの、「1月8日以降の休業分が対象」とし、昨年分を含めようとしなかったのだ。
これには当然、野党から批判が巻き起こったが、それでも政府は「昨秋以降で検討」とし、さらに批判を浴びる結果に。結果、昨春分まで拡大することとなったが、昨春分の補償は平均賃金の6割となり、中小企業対象者の8割補償と差をつけるかたちとなった。
いや、そればかりか、要望を受けた低所得子育て世帯への給付金は実現しておらず、立憲や共産党など野党4党はひとり親のみならずふたり親世帯も含めた給付金支給の法案を提出している状態だ。
「この私が話を聞いたんだから」と大見得を切っておきながら、この体たらく。これには、1日の衆院予算委員会で山井議員が「総理に面会してもなかなか政策が実現せず、一方、高額接待をしたら業界の言うことを聞いてもらえるのではないかということでは、コロナで苦しむ国民もやってられないのではないか」と追及をおこなったが、しかし、菅首相の返答はこんなものだった。
「私は国民にとって必要なものは、客観的に考えてきたようなものは、必ずしっかり対応する、そういう次第です」
要望を完全なかたちで実行しようともせず、挙げ句にこの言い草。これでは支援の拡充を「国民にとって不必要だと判断した」と言っているようなものではないか。
ろくでもない本音を開陳するだけではなく、自信満々に約束したことも、すぐに実行できるものなのにしようとしない。これをみれば、もはや総理大臣としての体裁を取り繕うことさえできなくなっていることがよくわかるだろう。
こんなポンコツ首相が権力を握っていたら、これから先、それこそ国民に大きな悲劇をもたらしかねない。菅首相は自ら総理の器でないことを認めて一刻も早く辞職すべきではないか。
(水井多賀子)
最終更新:2021.03.03 07:11